第2章 過去編
小さく呟かれた言葉はゆうりの耳には届かなかった。聞き返そうとしたがそれより先に彼の腕が身体へ回されしっかりと抱き竦められる。
大人になるまで待っていたら、あなたは本当にボクのものになってくれますか?それなら待ちますよ。どれだけ長い時間が経っても、ゆうりサンがご両親から貰えなかった愛情をボクがいくらでも注いであげます。だから…
「忘れないで下さいよ、その言葉。」
「忘れません。けど…他にお嫁さんにしたい方が出来たら遠慮しないで下さいね。」
「それはボクのセリフっス。ゆうりサンはまだ若い。引く手も数多でしょう。生きてる中でボクよりも良い人が居たらちゃんと自分の意思で選んで下さい。……まぁ、ボクよりゆうりサンの事大切に出来る男なんて居ないと思いますけどね。」
「ふふっ、そうかも。」
それから少しだけ会話を弾ませた2人はお互いの布団へ身を伏せた。けれどこれが、彼と話せる最後の機会となるなんて、ゆうりは思う事すらなかった。
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