第2章 過去編
ゆうりが瀞霊廷へ来てから2週間ほどの時が過ぎた。霊力の制御が上手く出来ない彼女を1人で放置する事も出来ず霊圧を調整出来る様になる迄の特別措置だ。拾って来た浦原が面倒を見る事になったが彼女の元々器用な性格も有り、その環境に慣れるまで時間は掛からなかった。
「浦原さん、書類持ってきましたよ。」
「ありがとうございます、ゆうりサン。今日も可愛いっスねぇ。他の隊長達に虐められたりしてませんか?」
「あはは…してませんよ。皆優しい人ばかりです。」
小さな頭を撫でると、少女は照れ臭そうに笑う。見た目こそ年齢の割に大人びた彼女だがあどけなさを残す笑顔に浦原はゆうりを愛娘の様に可愛がった。
「何デレデレしとんじゃこのハゲェ!仕事せんかボケ!!」
「痛ぁッ!」
柔らかな雰囲気が漂う中それをぶち壊したのは猿柿ひよ里だった。容赦無い飛び蹴りが浦原の背中を目掛け飛んで来る。モロに食らった浦原は吹っ飛び、猿柿はゆうりの前に仁王立つ。
「ゆうり!エロ親父に近づいたらアカンって言うたやろ!」
「大丈夫だよひよ里ちゃん。浦原さん、優しいから。」
「下心や、下心!」
大口を開けて怒る猿柿に臆すること無くゆうりは笑う。自分を拾い親切にしてくれている浦原への信頼は厚かった。そんな賑やかな部屋の襖が突如、ノックも無しに開かれる。
「お、居った居った。ゆうりちゃん今暇やろ?ちょっとシンジ兄ちゃんに着いてき。」
「あ、平子さんこんにちは。…行ってきていいですか?浦原さん。」
「いいですよん。平子サン、ゆうりサンに変なことしないで下さいよ〜?」
「アホ、もうちょい大きくならんと手なんて出せんわ。」
「…ボクの目の黒いうちは出させませんからね。」
「嫌やなぁ、冗談やて!そんな目せんでもええやろ。」
じろりと睨む浦原の視線など気にもせず平子はカラカラと笑った。そしてゆうりの手を取り部屋を出る。向かった先は彼が隊長を務める五番隊、平子の隊首室だ。
部屋に入ると既に別の男が居り襖が開く音で振り返った。
「…おや、君は…話には聞いていたが会うのは初めてだったね。僕は藍染惣右介。この五番隊の副隊長を務めている。よろしく頼むよ。」
「………初めまして、染谷ゆうりです。よろしくお願いします。」