第2章 過去編
西流魂街にて巨大な霊圧を確認。急ぎ確認されたしーー。
そんな伝令を受けたのはつい先刻の事だった。捜索を命令された浦原喜助は指定された地区へと向かう。
「確かに、ちょっと笑えないっスねぇ…。」
近づく度に強く感じる霊圧。その大きさは普通と思えなかった。少なからず死神クラスであり、並の魂魄では有り得ない。勿論、虚とも違う。だが何故急にこんな所に発生したのか…。それを確認するのが、己の仕事の訳だが。
伝令にあった場所に着く。そこには想像もしていなかった光景が広がっていた。
「これは……。」
周りには沢山倒れている魂魄。その中心には幼い少女に見える子が1人立っている。彼女は浦原の声に反応し振り返った。陽の光で反射する長く美しい銀色の髪。雪のように白く絹の如く滑らかな肌。澄んだ翡翠色の瞳。
美しいーー。
直感的にそう感じた。
「……お兄さん、誰。」
とても冷たい声だった。それと同時に重くのし掛るような霊圧が向けられる。警戒しているのだろう。浦原は我に返ると少女の警戒心を緩めようとヘラリと気の抜けた笑みを浮かべた。
「こんにちは、お嬢サン。ここで何があったんスか?」
「……。」
少女は周りに一瞥くれる。少し間を置いて桜色の唇をゆっくりと開く。
「…気付いたらここに居て、知らない男の人たちに追い掛けられた。辞めて、って大きな声で叫んだら、皆倒れちゃった。」
…なるほど、彼女の霊圧にあてられたのか。
そして自分の探していた高い霊圧の正体は間違いなく彼女である。追われた理由は…まぁ、考える迄も無さそうだ。
「どうやらキミはここに残してはいけないみたいっスね。ボクに着いてきて下さい。悪い様にはしませんよ。」
「……本当に?」
「ハイ、何でこんな所に居るのかも教えてあげる。大丈夫、ボクは元々キミを保護する為に来たんスから。」
「……染谷ゆうりです。よろしくお願いします。」
「ボクは浦原喜助。よろしくお願いします、ゆうりサン。」
そう言って小さく柔らかな手と握手を交わす。これが彼女と浦原の、最初の出逢いだった。
*