第2章 過去編
浦原は玄関まで出迎えに来たゆうりの頭を優しく撫でてから下駄を脱ぎ部屋へ上がる。ちゃぶ台の近くに座って彼女が台所で食事の支度を進める姿を眺めた。
「いやぁ、やっぱり良いですねぇ。家で誰かが迎えてくれるのは。ゆうりサン料理上手いですし。」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいです。」
「このまま死神辞めてゆうりサンと平和に暮らせたら良いのにって何度思った事か。」
深くため息を吐いた浦原にゆうりは笑ってちゃぶ台に味噌汁、米、ほうれん草のお浸し、煮物をそれぞれの分運んだ。彼の反対側の座布団へ座り両手を合わせる。食事の挨拶を終えるとそれぞれ口に運びつつ自然と会話は続く。
「こうしてるとまるで現世の夫婦みたいじゃないっスか?ゆうりサンが家事して、ボクが稼いで。」
「夫婦ですか…?それなら私は浦原さんじゃなくて喜助さん、って呼ばないといけませんね。」
「いいですねぇ!これからはそう呼んで下さい。」
談笑しながら夕食を終えると先にゆうり、次に浦原が風呂に入り再び穏やかな時間が訪れる。浦原が戻って来ると必ず布団の上に座り、彼に後ろから抱き締められるような形でもたれ掛かりながら瀞霊廷での話を聞く。それが彼女にとってとても楽しな時間だった。
「この間も大変だったんスよ。夜一サンに追っかけられるわ、平子サンに付き合わされるわ…。」
「なんで夜一さんに追われたんですか?」
「最近平和過ぎて暇だから手合わせ大会やろうって。ボクはもう十二番隊だから嫌なんですって言っても聞かないんス、あの人。」
「夜一さんらしいですね…真子さんは?」
「寝てる間に藍染サンに髪全部切られたみたいで丸坊主になってました。」
「え……ついに本物のハゲに…というか藍染さんそんなことするんですね、意外。」
「ひよ里サンがもう大爆笑してましたよん。」
「想像出来るなぁ。綺麗な髪だったのにもったいない。」
「ゆうりサンの髪の方が綺麗ですよ。」
彼女の髪に指を通し毛先へ向かって梳くと何の絡まりも無くするりと抜ける。ゆうりは振り返り、浦原の顔をジッと見詰めた。
「どうしました?ボクに見惚れちゃいました?」
「喜助さんは瞳の色が綺麗です。」
「そうっスかね?」
「柔らかい髪も、声も、優しい所も大好きですよ。」