第2章 過去編
「えぇー…今の所よく分かりません…。」
「どうせ定期的に浦原が見に来るのだろう?必ず採血と体調、何か違和感等がある場合伝え給え。本来なら私が直に見て、時間毎に採血を取り、脳波の反応を見たい所だが…。」
「それはさせません、って事でボクが経過の観察はしますよん。まぁ、どうしても食べ物が無くなった時の救済措置として作ってもらったんで普段は付けなくても構いません。」
「技術開発局ってほんとに何でも作っちゃうんですね、凄いなぁ。」
ゆうりは手首を飾るソレをマジマジと見た。見た目になにか特徴がある訳でもないのに、不思議なものだ。
「涅さん、ありがとうございます。」
「ふん、局長の男から頼まれたから作っただけだヨ。」
「俺も手伝ったんだぞ。」
「阿近!一緒に作ってくれたの?ありがとう!」
「今度礼持って戻って来いよ。俺は寝る。」
「うん、おやすみ。」
あっさりと仮眠室へと引き下がって行った阿近へゆうりはひらひらと手を振った。涅も伝える事を伝えた後、再び研究へと戻ってしまう。残されたゆうりは浦原へと視線を向けた。
「…それじゃあ浦原さん。お願いします。」
「…はい。行きましょうか。」
差し出された彼の手を取る。寂しくない、未練が無いと言ったら嘘になる。もう少し彼らと話したかったし、一緒に居たかった。それでも自分は死神ではないから。ここに残り続けることは出来ない。思い出は充分過ぎるほど貰った。生きていた時よりも余程幸福な時間だった。
最後に一言、ありがとう、と呟く。誰に聞こえるわけでもなく囁いた言葉を残し、ゆうりは浦原と共に瀞霊廷から立ち去った。
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