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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第8章 現世編(前編)



カラン、カランと下駄が鳴った。そのまま家の屋根や塀を伝い駆けてゆく。深夜という事もあってか、はたまた瞬歩とまではいかずとも素早い歩法のお陰か彼らの姿を目に留めた者は誰も居ないまま、浦原が既に抑えていたホテルへとあっという間に到着した。
予め渡されていた鍵を使い中に入る。電気を入れるとそこは至ってシンプルな部屋で、大きく真っ白なダブルベッドが1つに目の前には大きいテレビ、浴室はベタにガラス張りとなった部屋だ。床に降ろされたゆうりは興味津々に中を見渡す。

「わ、凄い。噂には聞いたけど、お風呂ガラス張りだ。結構広い。」

「一緒に入ります?ジャグジーも付いてますよん!」

「本当?…でも入るなら終わった後で良いかな。もうお風呂入ったし。」

「それもそうですねぇ。」

ゆうりはそう言ってベッドへ腰掛けた。ギシリ、とスプリングが軋む音が小さく響く。浦原は下駄を脱ぎ、素足で部屋を歩くと彼女の元へ歩み寄る。ゆうりが彼を見上げると、帽子を脱いだ浦原はそれをベッド脇に置き彼女の体の横に片脚乗り上げ身を寄せた。部屋のライトに照らされる白い頬へ片手を添える。柔らかく、滑らかで正しく女の柔肌だ。見上げたゆうりの瞳は相変わらず宝石の様に美しく吸い込まれそうに思えた。

「…ここまで連れて来てなんですけど、本当にいいんスか?」

「良いよ。元はといえばちょっかい出したのは私だし、喜助になら何されても怖くないから。」

「…ボクはアナタが好きです、これは友愛じゃない。知って下さい。どれだけボクがゆうりに焦がれているか。そして悪戯に口付けられて、どれだけボクが挑発に耐えて来たのか。アナタはなんでも受け入れ過ぎてしまう。しかも、無防備に…警戒心の欠片も無く無邪気に人の懐まで潜り込む。」

「き、喜助…?」

隻手が肩に乗せられゆっくりと身体がベッドへ倒れて行く。視界を埋める彼の表情は普段の様な気の抜けた笑顔なんてものでは無い。男の目だ。ゆうりはゾクリと背筋が粟立ったのを自覚した。このまま、喰われる。無意識に生唾を飲み込むと、彼はうっそりと瞳を細め緩やかに口角を持ち上げる。
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