第8章 現世編(前編)
「それじゃあ行こうか!」
「な…何で手なんか繋ぐんだよ!別に逃げねーぞ!」
「まぁまぁ良いじゃない。逃げなくても、はぐれたりしたら大変でしょ?」
「う……調子狂うぜ全く…。」
ウルルは大きく抵抗すること無く手を繋ぎ、ジン太は照れ臭いのか握り返さずとも振り払う事はしなかった。そうして3人は並んで空座町の街へくり出る。まだ余り外を歩いていなかったのか2人はキョロキョロと辺りを見渡しており、それに気付いたゆうりは声を掛けた。
「まだこの町のどこに何があるか全然分からないんだっけ?公園とか空き地とか見てみる?多分ほかの子供達も居るだろうし友達出来るかもよ。」
「…いい、俺たちは店番の為に連れて来たんだろ。」
「私は…外よりお家で遊びたい。」
「店番の為っていうのは確かにそうかもしれないけど、毎日毎日店番なんてダメだよ。子供なんだから沢山遊ばないと!あ、私と遊ぶ?足速いし缶蹴りなら負けないよ。」
「お前霊圧で場所分かるだろ!」
「あ、そっか。」
ツンツンとした態度のジン太に対しゆうりは気にも止めずケラケラと笑った。嫌悪される事無く笑い飛ばされてしまう事に彼は唇をへの字に曲げる。…生きてた頃は、こんな己を両親は疎ましそうにしていたのに何故彼女はそんな顔一つ見せないのかが分からなかった。
「2人とも好きな食べ物は何?」
「急になんだよ。」
「作ってあげようと思って。今日はウルルちゃんの好きな物、明日はジン太くんの好きな物!そうだなぁ…明後日は喜助の好きな物でも作ろうか。」
「好きな、もの……。」
ウルルは俯きながら考えた。好きな食べ物…聞かれた事もなければ意図して作ってもらったことも無い。
「えっと……オムライス…?」
「ウルルちゃんはオムライスが好きなんだ!じゃあトロトロの美味しいやつ作れるように頑張るね。ジン太くんは?」
「……ハンバーグ。」
「ハンバーグも良いね、大きいの作ってあげるよ。」
「お前料理出来んのか?いつもテッサイが作ってるだろ。」
「あら失礼ね!私だって死神になってからは自炊ばっかりしてたんだから作れるわよ。特に現世の駐在任務の時はもっとたくさんの家族と過ごしてたからね。」
「はぁ?家族なんて居ねーじゃん、死んだ後に親にでも会ったのか?」