第8章 現世編(前編)
「…何の為にそのような義骸を作ったのじゃ。尸魂界にバレればそれこそ追放では済まぬじゃろうて。」
「そんなの、決まってるじゃないですかぁ!店番してもらう為っス!」
「…は?」
「いやぁ、これから戦いに備えて色々準備が必要でしょう?あたし自身今より研究を進めたいですし、この店は万年人手不足だ。だから、空座町より遠い…親と鉢合わせる事の無い場所で声を掛けて来たんです。子供を選んだのは、科学者としてこの義骸の出来を見たいというエゴ…この子達を選んだのは、どちらも死因が虐待死って事。ボクはね、2人の新しい家族になろうと決めたんです。」
そう言うと浦原は瞳を細めて笑い彼らの頭を撫でた。ウルルは何も言わずその手を受け入れるが、ジン太は鬱陶しそうに手を払う。そんな彼らの姿が昔の自分と重なり、ゆうりは眉を下げ2人の前へしゃがみ込んだ。
「…改めて、私は染谷ゆうり。私も2人と同じ様に昔喜助に助けて貰ったの。ゆうりでもお姉ちゃんでも好きに呼んで。これからよろしくねウルルちゃん、ジン太くん!」
「えっと……よ、よろしくお願い、します。」
「…けっ、大人なんて信用出来るかよ。」
ウルルはどうやら臆病な性格のようでオドオドしながらも小さく頭を下げた。逆にジン太は突っ張った性格らしく、ツーンとそっぽを向く。矢張り過去が過去なだけに2人とも心に仄暗いものを抱えているらしい。浦原に懐いているのは、おそらく再び生を貰い受けたからだろう。
こうして新たな家族を迎えた浦原商店はまた賑やかな日々が幕を開けるのだった。
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