第8章 現世編(前編)
「わざわざ空座町の外まで出て何しに行ったのかと思えばお主…。」
「ちょっと、夜一サンまで何言ってるんスか、この子達は……」
「見損ないましたぞ店長…店をあけたと思えばそのような理由と…。」
「話を聞いて下さい!」
「…パパ?この人たちは…?」
「ウルルまで悪ノリしない!!」
ツインテールの女の子、ウルルと呼ばれた少女は浦原の羽織を握り彼の後ろへと隠れた。しばし固まったゆうりだったが直ぐに両手を合わせ思い出したように声を上げる。
「今夜は赤飯かな、豆買って来ないと。」
「ほら話拗れたじゃないスか!良いから全員店に入って下さい、今日お店は閉店っス!」
彼の一声で握菱は店のシャッターを降ろしその他の面々はリビングへ戻った。ウルルはソワソワとしておりどこか落ち着かない様子だが、赤髪の男の子はムスッとした顔のまま無言だ。全員がちゃぶ台を囲み座った所で浦原は白い扇子をパンっと開く。
「紹介します、まずこの黒猫が四楓院夜一サン、銀髪の女性が染谷ゆうりさん、この2人…というか1人と1匹はアタシと同じ死神です。で、此方が握菱鉄裁サンで元鬼道長でした。」
「ど、どうも…。」
「フンっ…!」
「はは…スミマセン、まだ礼儀がないのは許してあげて下さい。この女の子は紬屋雨、男の子は花刈ジン太。2人は整の霊でした。」
「え…霊?」
「どういう事じゃ?」
「ボクが作っていたのは、"肉体強化及び成長する義骸"です。」
「またとんでもないものを作ってますな…。死神が義骸に入るならまだしも、霊を入れるとは。」
「2人は死神迄とはいかずともそれなりに強い霊圧なんです。この義骸は、脱がない限り霊が虚化するのを完全に防ぎます。それに加え改造魂魄と似て肉体を強化する機能を付けました。まぁこれは、無理に付ける必要も無かったんスけど念の為、ね。」
「成長するっていうのは?」
「文字通り、人間と同じ様に成長します。本来整の霊は現世に居る限り歳をとる事はありません。が、この義骸に入る事でこの子達は周りの子達のように大きくなる事が出来るんスよ。まぁ…成長速度は一定では無いかもしれませんけど。」
浦原から説明を受けた2人と1匹は顔を合わせる。それはまるで死者を甦らせるのに近しい技術だ。そんな事をしてもいいのか…また、死神として許されるのかが疑問だった。