第2章 過去編
教本を受け取ったゆうりは彼らに改めてお礼を言った後、今度は六番隊へと向かう。既に仕事を終えた2人は縁側でのんびりと茶を飲んでいる所だった。
「こんばんは、お疲れ様です銀嶺さん、蒼純さん。」
「お疲れ様です。」
「おぉ、ゆうりか。浦原隊長も久しぶりじゃな。」
「お疲れ様。……あれ、その髪紐は…。」
視軸が絡んだ蒼純は彼女の髪を括る赤い髪紐を見て目を丸めた。それに憶えがあったらしい。少し間を空けた後、何かを察したかのように彼は笑う。ゆうりはその笑顔を見て、白哉も笑うとこんな顔になるのだろうか…そんな事を思った。
「白哉さんからお借りしました。次にお会いした時は必ず返す約束をしています。」
「へぇ、そうか!それは息子の大切なものだ。無くさないであげてくれ。」
「もちろんです。」
「ほー、白哉がソレをのぅ…珍しい事もあったもんじゃ。」
「少しは大人になったのかもしれませんね。」
銀嶺と蒼純は顔を見合わせ笑っていた。この髪紐は彼らにこんな優しい表情をさせる程大事なものだったのだろうか…?少しばかり不安に思ったが今更返しに行くわけにもいかない。ただ、必ず再会する時まで大切に使おうと心に誓う。
六番隊を後にした2人は八番隊へと向かっていた。その最中、徐々に…いや、六番隊の隊舎を後にした辺りから極端に浦原の機嫌が悪い。落ち込んでいるというか、なんというか。
「浦原さん、疲れてますか?私1人でも行けますよ?」
「え?あ…いえ、疲れてなんかないっスよ。ただ、やっぱりゆうりサンは誰にでも好かれるんだなァって感心してた所です。」
「そう…なんですかね…?でも、いろんな人から色んなものを沢山貰って、凄く嬉しいです。生きてた時よりもずっと今が幸せかもしれません。」
「ゆうりサン、年の割に随分礼儀正しいなって思ってたんですけど、ご両親のおかげで?」
「あぁ…えっと……父の…教育の賜物です。」
そう言ったゆうりは分かりやすいくらいの作り笑顔を浮かべた。そんな彼女に違和感を持った浦原が突然立ち止まる。ゆうりも遅れて歩みを止めると、キョトンとした顔で振り返った。
「浦原さん?」
「ゆうりサン…貴方もう少し年相応にわがまま言ったり甘えて良いんですよ。」
「へ…?」