第2章 過去編
「こんばんは、染谷くん。お疲れ様です、浦原隊長。隊長なら今ギンと隊首室に居るよ。入るかい?」
「お疲れ様で〜す。ボクはただの付き添いなんで気を遣わなくていいですよん。」
「すみません、少しだけお時間下さい。」
「ゆうりかー?入りぃ!」
「隊長…他の隊士に聞こえるので叫ばないで下さい。」
霊圧で察したのか隊首室から響く声に藍染は困ったような声で返す。扉を開けば平子は執務机で頬杖をついており、市丸は彼に書類のチェックをして貰っている所だった。
「なんや喜助付きか。」
「酷い言い草ですねぇ。それより平子サン、だいぶゆうりサンと親しい間柄の様で。」
「どや、羨ましいやろ。」
バチバチと視線で火花が散る2人を気にとめず、彼女は市丸へと駆け寄った。市丸は髪を結いた姿のゆうりに小さく口を開く。
「似合うとるで、その髪型。」
「ありがとう。あのね、私流魂街に行くことになったの。だからお礼を言いに。藍染さんも、図書館では色々ありがとうございました。」
「僕は何もしていないよ。住む場所は決まってるのかい?」
「はい、お陰様で。」
「えぇー、なんやゆうりホンマに瀞霊廷出てまうの?寂しくなるわー。」
「私も寂しいですよ真子さん。けど、決まりですから。」
「…ゆうり、ちょい待ちや。」
市丸は少しの沈黙の後隊首室から出ていった。何事かと視線で彼を追う。程なくして戻って来た市丸は何やら本を2冊抱えている。
「それなぁに?」
「ボクが霊術院に通ってた時貰った鬼道の教科書。破道と縛道や。回道は霊術院では習わんから堪忍な。」
「…え、く、くれるの…?」
「もう使わんからな。藍染副隊長から鬼道を勉強してるって聞いて持って来たん。図書館の本やと書き込んだり出来んやろ。ボクのあげるわ。」
差し出された2冊の教科書を受け取ったゆうりはこれまでに無いほど目を輝かせ笑った。そして両腕を広げ彼へ思い切り抱き着く。まさかそこまで喜ばれると思っていなかった市丸は驚きながらも抱き留め、平子と浦原は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、藍染は他人事のように笑う。
「ありがとう!!絶対大切にするから!」
「はー、オレも捨てなきゃ良かったわ、教本。」
「隊長が情けない顔で情けない事を言わないで下さい…。」