第7章 死神編【後編】
私が戦っていたのは虚だった筈なのに。なんで、なんで希一くんと、透くんが倒れているんだ…?しかもその傷は…
「…私が付けた、傷じゃない…!!」
真っ二つになった透。肩から腰へ切り裂かれ、涙を流す希一。全身が震える。違う、私じゃない、私は…!!
「虚と戦っていた、か?それは君が見ていた幻覚に過ぎない。尤も、彼らにとっては君がさぞ恐ろしい虚に見えていただろうけどね。」
彼の言葉にハッとした。この男の斬魄刀の能力、完全催眠。1度でも始解を見た相手を催眠に掛ける事が出来る能力。実際目の当たりにするのは初めてだった。まさか、霊圧すら誤魔化せる力が有るなんて。
「ッ…藍染!!」
「何を怒る?殺したのは君だ。私の能力を知るゆうりならば、少し考えればわかる事だろう?」
両手で斬魄刀を持ち、始解の解号を口に出す事無く瞬時に始解させた胡蝶蘭を振り上げ思い切り振り下ろす。腹から血が吹き出ようが痛みが有ろうが関係無かった。ただ怒りに任せ、刀を振るう。しかし彼は涼しい顔で難なく受け止めた。
「何処まで、バカにすれば……!」
「己の非力さを私に当たるな。怨むなら己の無力さを恨むが良い。」
「ぐっ…!!」
あっさりと刀を弾かれふらつきながら後退し、胡蝶蘭の鋒を地面に突き立て何とか体制を保つ。それでも藍染から視線は外さなかった。頭の中が、感情がグチャグチャになりそうだ。
「もう次期、日番谷冬獅郎が到着する。この光景を目の当たりにした彼は、君を仲間殺しの重罪人として捕らえるだろう。さぁ、どうする?次の手は考えられそうかい?」
「触るな…!」
彼の手がゆうりの顎を掴む。無理矢理視線を絡められ眉間に皺を寄せた。
「聞くだけ愚問だと分かっては居るがあえて聞こう。私に着く気は?」
「…お察しの通りよ。」
左手で藍染の手を払う。胡蝶蘭を元の形へ戻し鞘に収めたゆうりは数歩下がって藍染と距離を置く。
「…捕まるのも貴方の味方になるのも、御免なの。さようなら。」
ぐっと足に力を込め、霊力を腹へ集中させる事で一時的に傷を塞いだ状態で瞬歩を使いその場を去った。今なら市丸の言葉の意味がよく分かる。…しかし捕まる訳にはいかない。
捕まってしまえば、卍解を使う機会すら得られない。自分が生きていれば、殺してしまった彼らを生き返らせる事が出来る。だから…。