• テキストサイズ

【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第7章 死神編【後編】


目の前から消えたゆうりを藍染は追うことはしなかった。これで暫く彼女は何も出来ないだろう。それでいい。

「制御装置はあくまで外さない、か…。それでも構わないが、いい加減君の本気が見たかった所だ。まぁ、また機会は有るだろう。」

外套を翻し、冷たい眼差しを倒れている瑠衣へ向ける。そして、迷いなく振り下ろされた斬魄刀が彼の喉を斬り裂いた。
ゆうりはただ走った。誰にも見つからない場所へ、誰も居ない場所へ。とにかく身を隠し、己の治療をしないとこのままでは死んでしまう。1度足を止め、岩陰に凭れ呼吸を整える。…藍染はどうやら追っては来ないらしい。

「はッ……流石にちょっと、ヤバいかな…。」

視界が霞む。血が流れ過ぎたのだろう。このままここで死ぬ?誰の目に留まる事無く、ひっそりと?…そんなのは嫌だ。降りしきる雨が冷たい。それに眠くなってきた。
ぼんやりと曇天の空を見上げていると、黒い蝶がひらりと目の前を通り過ぎる。

「地獄蝶…何で…。」

「言わんこっちゃ無い。心配するボクの身にもなってや。」

「ギン…!」

ザリ、と砂粒を踏み締め現れたのは外套を纏った市丸だった。彼がこの地獄蝶を連れて来たらしい。

「何しに来たの…。」

「ゆうりを逃がしに。」

「…それも藍染の命令?」

「これはボクの独断。言うたやろ。ボクの望みは君が隣に居る事。死なれたら、叶わん。」

市丸は斬魄刀を抜き現世へ向かう為の門を開く。いつもと変わらない気味の悪い笑顔を浮かべている。その姿に自然と涙が浮かんだ。

「ほら、行きや。何処向かうべきかは、分かるやろ。」

「……ありがとう。絶対、借りは返すから。」

市丸の首へ腕を回し唇を重ねた。濡れた唇は鉄のような味がする。彼は唇に纏った血をペロリと舐め取り彼女の頭を撫でた。
ゆうりは、地獄蝶を連れ重たい足を引きずって現世へと向かう。方角は決まっている。空座町。ここで平子に合流する事さえ出来れば…。

「もう少し…。」

よろよろと光の差す方へ歩き続けた。漸く現世に辿り着いた。外は尸魂界と違って夜になっており、空は星が瞬いている。地面へ降り立つと同時に足元が縺れ倒れ込む。腹が痛い。口の中も血の味で気持ち悪い。薄れ始める意識の中で、最後に目にしたのは"浦原商店"と書かれた古ぼけた看板だった。

/ 623ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp