第7章 死神編【後編】
変な夢を見た。ひよりちゃんの身体が真っ二つにされて、沢山の死神が傷付いて、ギンが死んでしまって…見た事も会ったことも無い、橙色の髪をした男が、藍染隊長と対峙している夢。つんつん髪をした橙髪の少年は、振り返ったかと思えば海燕さんのような笑顔を見せる。
「俺が必ず、藍染を倒すから。」
そう言った彼は、真っ黒で細い斬魄刀と思しきものを持って行ってしまった。
「んん………夢…?」
少年の後ろ姿を見送った所で目を醒す。外を見てみると生憎の雨。それにしても、随分リアルな夢を見たものだ。まるでこれから起こることを示唆するかの如く生々しい夢に眉間に皺を寄せる。それにしても、あのオレンジ髪の男……海燕さんにそっくりだったな。そんな事を思いながら着物を脱ぎ死覇装へ身を包む。
「ふあぁ……眠い。雨嫌だな。」
ザァザァと降りしきる雨は耳にこそ心地いいものの、仕事場に行くまで濡れてしまうのが嫌で堪らなかった。それにジメジメしていて何となく気分も落ちてしまう。
それでも仕事は無くならないわけで、支度を進める。歯を磨き、顔を洗い、平子から貰ったバレッタをハーフアップにした結び目に付けて手首に香水を吹き掛けた。
「…良し、行こう。」
斬魄刀を腰に挿し、暗い赤色をした番傘を開き部屋を出る。こんな雨の日は、何か不吉な事が起こりそうで腹の底がムズムズする。ただの気のせいだとは思うけれど。
十番隊の隊舎へ着くと、なんだか少し慌ただしかった。行き交う隊士達はバタバタと走って通り過ぎて行く。疑問に思いながらもゆうりは日番谷の居るであろう執務室へ足を運ぶ。
「おはよう、何かあった?」
「あぁ、尸魂界内に虚が出現したらしい。先に先遣隊を出したが、帰って来たのは1人、重症だ。残りの3人が戦闘中だ。」
「…そう。私行くよ。」
「いや…俺も行く。」
「大丈夫だよ、私1人で。虚の情報は?」
「……限りなく人型に近い形をした黒い虚だ。場所が流魂街68区域。一体だが、相当強いと見ていい。」
「わかった。住人の安否も有るし私先に行くから冬獅郎は部隊整えたら来て。」
「無茶するなよ。」
「ありがと。」
嫌な予感と言うものは何故か当たるものだ。ゆうりは番傘を放ると懐に入れたレコーダーのスイッチを起動させた。尸魂界に出現したとされる虚の特徴が、現世で一心と戦ったアレと似ている。