第7章 死神編【後編】
「貴方は優秀だから推薦され、その期待に応えている。それでいいじゃない。誰も批判はしていないし、ちゃんとついて来てくれてるでしょ?私は、舐められない様に真面目に一生懸命頑張ってる冬獅郎を見てると支えたいって思えるし、そんな君が好きよ。乱菊さんだってそうじゃない。文句一つ言ってないもの。」
「……好きって、男に対して簡単に使うもんじゃねェぞ。」
頬へ置いていた両手の手首が掴まれやんわりと外させられる。日番谷はそのまま手を離さずそれっきり口を開かない。何かを考えている様にも見えた。
「私は皆好きだよ。冬獅郎もー、乱菊さんもー、勿論一心さんも、海燕さんも。」
「友愛だろ。全部。」
「えぇ、その通り。…でも、こんなに好きな人達が沢山居るのに、1番大切な人には今もまだ会えてないの。1番初めに私を見つけてくれて、1番愛してくれた人に。」
「愛……ッ、な…こ…恋人が居たのか…?」
本当に1番好きな人の事を思い出すと、少しだけ寂しくなった。しかし大まかでは有るものの暮らしている場所は分かった。それだけで大収穫だ。次の休みにでも、現世に向かおうとも思っている。あわよくば、一心と接触も出来たら上々。
浦原へ思いを馳せるゆうりの瞳が、声があまりに優しく聞こえた日番谷は目に見えて驚愕の表情を見せた。
「恋人じゃないよ。恋人になるかもしれないけど。」
「は…!?」
「告白されてからちゃんと返事を返してないの。大人になるまで考えさせて、って濁して…それ以来会えなくなっちゃって。私もそろそろいい歳だし次に会ったら返事をしないといけないんだけど……中々なんて返せばいいか分からなくて困っちゃうものだね。私八方美人なのかも。」
今まで白哉、市丸、檜佐木からのアプローチをのらりくらりと躱して来た。彼らや、阿近、平子…色々な男と密に関わり時には心臓が高鳴る様な事もあった。しかし結局全てイェスで返してはいない。何かと理由を付けては逃げ続けて来た。告白を断る事で、今の関係が崩れ去るのを恐れた故でもある。けれど、以前よりは付き合う事が何なのか…相手との未来を思い描ける様にもなった。
「大人になるまで、って…幾つの時に告白されてんだ…。」