第7章 死神編【後編】
「ふぅ、これで全員かな。お疲れ様!」
手拭いを外したゆうりは改めて手合わせした相手一人一人と握手をする。
「染谷さんに全く太刀打ち出来ませんでした…。少しくらい傷付けられるかと思ってたんですけどまだまだですね。」
「まぁ、私は此処に来てもう長いし…皆は卒業したばかりでしょう?同期なの?」
「俺と透と瑠依は同期です。他の人達は1つ上の先輩で、日番谷隊長と同時期に死神になってます。」
「へぇー、仲良いのね。」
「俺ら3人は腐れ縁みてーなもんっスよ。出身も同じだしな。」
「染谷さん、明日も手合わせお願い出来ますか?僕、もっと強くなりたくて…。」
「勿論。じゃあ明日も午後に此処に来てね。透くんと希一くんはどうする?」
「行くっス!」
「俺もよろしくお願いします!」
「おいお前らズリぃぞ!俺らもお願いします!!」
「ふふ、決まりね。それじゃあまた明日。」
結局、今日手合わせをしたメンバー全員と約束をする羽目になったが嫌だとかマイナスな気持ちは一切無かった。頼られるのは悪くない気分だ。それに何だか、恋次達と初めて出会った頃を思い出す。
ゆうり以外の全員が、遠巻きに見ていた日番谷へ頭を下げ稽古場から去って行く。既に日も暮れてしまっており、ゆうりも帰宅しようかと思い踵を返した所で日番谷と目が合った。
「最後まで見てたの?恥ずかしい。」
「目が離せなかった。」
「…冬獅郎がそんな事言うなんて珍しいね。どうしたの?」
「何で、お前じゃなくて俺が隊長に選ばれたんだ…?俺より、ゆうりの方が向いてるだろ。推薦され無かった理由が分からねェ。」
「何言ってんの。私直ぐに勝手にどっか行くし、総隊長怒らせた事も有るし、推薦出来ることなんてないよ。卍解使えないね。」
「…本当に使えないのか?」
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。日番谷は真実を探ろうと顔を寄せ瞳を凝視した。彼の目には疑いの色が滲んでいる。やけに鋭い日番谷にゆうりは一瞬視線を斜め上へ持ち上げたが、誤魔化すように笑う。
「嫌だなぁ、本当よ。それに今更交代なんて無いでしょ。」
「それは…そうだが……。」
まだ何処か不満そうな彼を見てゆうりが彼の両頬を手で包んだ。己と似た翡翠色の瞳を見詰める。日番谷の目が戸惑いで揺れた。