第7章 死神編【後編】
食べる前より些か不機嫌そうな顔を浮かべる日番谷に松本はニヤニヤと唇を歪める。ゆうりは、こういう顔はギンにそっくりだなぁ…と思いながら口には出さず、もぐもぐと咀嚼を続けた。
「あら〜?隊長何むくれてんですかぁ?」
「別にむくれてねェよ。」
「そうかしら?ゆうりが手握られてからちょっと霊圧揺れましたけど?」
「…揺れてねェ。」
「ゆうり、アンタもモテるわねぇ。」
「稽古を付けるのにモテるモテないは関係ないですよ。それに、乱菊さんの方が美人ですし。」
「もうっ、嬉しい事言ってくれるじゃない!」
「いたたた。」
ばしばしと背中を叩かれゆうりは笑いながら最後の団子を飲み込む。茶を啜り一息つくと立ち上がる。グッと思い切り伸びをしてから執務室の扉へ向かう。
「じゃあちょっと行ってきます!」
「怪我させるなよ。」
「普通怪我するなよ、じゃないですか?」
「平隊士相手に怪我しないだろ。俺も後で見に行く。」
「隊長ってば本当にゆうりの事好きですね〜。」
「バッ…変な事言うんじゃねェ!俺はただコイツがどれだけ強いのか見たいだけだ。」
何か言う度に突っかかって来る松本に日番谷は頬を朱に染め、手に持ったままの食べ終えた団子の串をバキリと折った。
ゆうりはちょっとした気分転換を終えた所で、手拭いと己の木刀を持ち約束通り稽古場へ足を運ぶ。中には佐々木を含む数人の隊士が稽古場に居た。
「あれ、なんか人多いね。」
「すみません…染谷さんに稽古つけて貰える事になったのを自慢したら増えてしまって…。」
「僕も染谷さんに稽古付けて貰いたいです!」
「自慢するような事じゃないし、頼まれればいつでも相手するのに。」
1度木刀を壁へ立て掛け手に持っていた手拭いで目を覆い後ろでしっかり結ぶ。何故目隠しをした状態にしているのか分からず佐々木は小首を傾げた。
「…まさか、目隠しして戦うんですか?」
「うん、霊圧探知能力を上げたいから。探知能力が上がれば人の姿形も結構はっきり分かるようになるのよ。表情とか細かい所は流石に無理だけどね。」
「でも…。」
「大丈夫。手加減は要らないし1人ずつ、本気で掛かってきて。」