第7章 死神編【後編】
団子を頬張りながらむくれる松本にゆうりは眉を下げる。概ね居場所の予想が付くことは言えなかった。一緒に居るであろう相手が滅却師である可能性が有るから、尚更だ。下手ないざこざを起こしたくは無い。
「その内ひょっこり帰って来るかもしれませんよ。」
「「その時は一発殴る。」」
「容赦ないね…。」
真顔でピッタリと言葉を重ねる2人に頬が引き攣った。怒ってる、というよりも心配かけやがって、という意味だとは分かったが。
「それにしても、冬獅郎は凄いね。たった1年で隊長でしょ?卍解使えるの早すぎるよ。」
「…俺は元々学生の頃から始解は出来てた。卍解の練習も学生の内から始めていたから、実際使える様になるまで3年は掛かってる。それに、まだ卍解が出来るだけで使いこなせる迄には至ってねェからな…。」
「謙虚だなぁ。」
そんな事を話して笑っていると部屋の外から声が掛けられた。3人は団子を食べる手を止めて耳を傾ける。
「じゅ、十番隊、佐々木希一です!染谷三席はいらっしゃいますでしょうか!」
「はーい、居ますよ。」
「失礼します!お疲れ様です、日番谷隊長、松本副隊長!」
「おう。」
「お疲れ〜。」
襖が開かれると日番谷より少し身長が高い位の、深い紺色の髪をした童顔気味の男が緊張した面持ちで立っていた。佐々木と名乗った男は、ゆうりを見るなりぱっと顔を輝かせ勢い良く頭を下げる。
「あのっ、俺まだ死神になったばかりでまだ弱くて…午後から斬術の稽古をつけていただけないでしょうか!」
「私が?良いよ。」
「やっぱり駄目で……えっ、良いんですか!?」
「勿論。お団子食べたら行くから稽古場で待ってて。」
断られると思っていたのか彼は一瞬しょんぼりとしたが返答を聞いた途端キラキラした目でゆうりを見詰め団子を持たない方の手を両手で包んだ。途端日番谷の眉がピクリと揺れる。
「ありがとうございます!やっぱり噂通りとても優しい方なんですね!楽しみにしています!」
「ふふっ、面白いね希一くん。こちらこそよろしく。」
まるで尾を振る犬のように爛々とした眼をする佐々木にゆうりは笑った。彼が部屋を出ると、ゆうりも先程より少し急いで団子を頬張る。