第7章 死神編【後編】
…まだだ。こんなものでは無いだろう。次はどうする?どうやって君の友人を護る?少しずつ、追い詰められていくのが分かるだろう?何故私達が浦原喜助が秘密裏に造った外套を所持しているのか聞かなかったのは、知るのが怖かったのか?…彼女に対する興味が尽きない。だが所詮、一時の戯れだ。此処での生活が終わればゆうりに対する興味も削がれるだろう。それまでの、ほんの戯れ。なのに何故だろうか。彼女と会話を交わす時間は嫌いでは無い。更に言えば、好ましい時間にも思える。この感情に名前は有るのだろうか。藍染は己の心臓に手を充てる。そして普段と変わらず、規則正しく生を刻む心音に、ただ自嘲じみた笑みを浮かべるのだった。
ゆうりは苛立ちを隠しきれぬまま、十二番隊へと足を運ぶ。普段露骨に負の感情を表に立たせ歩く事は無い彼女は珍しく隊士達の目を引く。本当は十番隊へさっさと行かなければならないのは分かっていたが、ゆうりの足は止まらない。
目的地へ辿り着くなり躊躇いなく十二番隊の扉を開き阿近の姿を探した。
「阿近、居る?」
「…何だ、珍しく人が来たかと思ったらゆうりか?…何ピリピリしてんだよ。」
奥の扉からひょっこり顔を出した阿近は寝不足なのか目の下に若干の隈が出来ていた。彼は大きな欠伸をしながら後頭部を掻く。ゆうりは直ぐに阿近の元へ向かうと両腕を伸ばし、やや細めの身体へ抱き着いた。周りの視線は一気に2人へ集中する。阿近は目を丸めて彼女を見下ろしたが、何かを察してか軽く頭をポンポンと叩く。
「……貴方に作って欲しいものが有るの。」
「仕事の依頼か、聞いてやるよ。此処で良いのか?」
「2人になりたい。」
「…なら、俺の部屋来い。」
言葉の代わりに頷いた。阿近に連れられ部屋に入ると、彼は適当な位置にどさりと座る。ゆうりも向き合う形で床に座り、直ぐに重い唇を開く。
「作って欲しいのは、ボイスレコーダーなんだけど。出来れば小さくて…レコーダーだと分からないデザインがいい。誰の声かハッキリわかる様にして欲しい。」
「オイオイ、待てって。何に使うんだよそんなの。」
「ボイスレコーダーなんだから、会話の録音に決まってるでしょ?」