第7章 死神編【後編】
「そうだ。あの夜、構ってあげることが出来なかったからね。今話し相手にでもなってあげようか。聞きたいことがあって此処へ来たのだろう。」
「……本当に一心さんが行方不明になった事には関与してないんですか?」
「くどいな。彼は自分の意志で再び空座町にでも向かったのだろう。私の知るところでは無いし、彼自身に関する興味も無い。」
「…藍染隊長は、霊王を殺す気ですか。」
「あぁ。」
問い掛けに対し驚きも躊躇いもせず答えた藍染にゆうりの方が驚いた。
「書庫での調べ方は悪くなかった。私が読み進めていたものを重点的に選んだだろう。早かれ遅かれ答えに辿り着くと思っていたよ。」
「なんの為に…?今のままじゃ嫌なんですか?平和なままの何がそんなにダメなんですか?わざわざ均衡を崩して…」
「そこまでだ。」
捲し立てるように質問を並べるゆうりを藍染はさぞつまらないものを見るような冷たい視線を向けた。それに気付いた彼女は平静を取り戻しグッと押し黙る。
「…それを聞いて素直に答えると思ったか?違うだろう。」
「……仰る通りですね。これ以上問答しても無駄だということも分かったので、失礼します。」
「待て。」
長い銀色の髪を靡かせ踵を返した所で呼び止められる。足を止めたが振り向きはしない。そのまま藍染の言葉を待った。
「…雛森くんを私の部下に迎え入れたよ。彼女はとても純粋かつ従順で…扱いやすい。いい子だ。」
「脅しのつもりですか?桃は殺させません。」
「どうかな。彼女は私に絶対の信頼を置いているからね。それから、吉良イヅルはギンの下に付けた。阿散井恋次は……扱いに困りそうだったので、直ぐに十一番隊へやってしまったが。」
「…回りくどい事を。単刀直入に、友人に手を掛けられたくなければこれ以上余計な事をするなって言ったらどうですか?」
「伝わっているのならそれで良い。常に見ているよ。十番隊でも、しっかり働くといい。」
「有難いお言葉ありがとうございます。」
素っ気なく返したゆうりはそのまま執務室を後にした。残った藍染は、彼女の去った場所を見詰めて口角を吊り上げる。