第7章 死神編【後編】
「ゆうりさん!」
「桃?…五番隊に移籍したんだ。元気にしてた?」
「はい!ゆうりさんは十番隊に移動するんですよね?」
「よく知ってるね?」
「藍染隊長から聞きました。シロちゃ……日番谷隊長、いきなり1番偉い立場になって不安も沢山あると思うんです。よろしくお願いします。」
「あれ、桃って冬獅郎と知り合いなんだっけ?」
「幼馴染なんです。死神になる前から一緒だったんですよ。」
「そっか、知らなかった。とっても大切なんだね。」
「口悪いしちょっとひねくれてるけど、本当は優しくていい子なんですよ。私の大事な幼馴染です。」
雛森は少しだけ恥ずかしそうにはにかんだ。そんな彼女が微笑ましく思い、自然とゆうりの頬は綻ぶ。
「ねぇ桃、藍染隊長居るよね?今時間取れそうかな。」
「大丈夫だと思います。お呼びしますか?」
「ううん、隊長をわざわざここまで呼び出すのは申し訳ないから自分で行くよ。執務室かな?暫くお邪魔するね。」
「はい、ゆっくりしていってください。」
小さく頭を下げた雛森に軽く手を振り隊舎の奥へと向かった。執務室とおぼしき部屋からは藍染の霊圧を感じる。ゆうりは眉間に眉を寄せたまま扉の外から声を掛けた。
「……藍染隊長、染谷です。入って宜しいでしょうか。」
「染谷くん?構わないよ。」
返事を聞いてから、ゆっくりと扉をスライドさせる。部屋の奥では藍染が頬杖をついてゆうりを見ていた。まるで待っていたかのような姿勢に表情が引き攣る。部屋へ1歩踏み入れ、襖を閉めた刹那、ゆうりは床を蹴り、一気に彼と距離を詰め机に両手を置き身を乗り出す。
「…一心さんに何したんですか。」
「言い掛かりだな。私はあの日以来彼には何もしていない。尤も、キミと志波一心が会話出来ない様に六番隊管轄区域へ虚を出現させたのは私だが。」
「ッ……!とことん私の邪魔をするのがお好きな様ですね。」
「あぁ、キミが怒り嘆く様を見るのは気分が良い。どうだ?頼れそうな相手すら失ってしまった今の気分は。」
「…最高の気分ですよ。」
苦虫を噛み潰したような顔を浮かべて視線を横へと流す。この男の一言一言が苛立ちを増幅させた。何が気に食わずしてこれ程までに目をつけられてしまったのか。思わず目の前で溜め息が溢れそうだ。