第7章 死神編【後編】
現世から戻った翌日からは異様に忙しい日が続く。六番隊の管轄する地区でやたらと虚が出現するようになり、いよいよゆうりまで駆り出され、落ち着くまでの短期間現世へ留まる事になってしまった。本当ならば早急に一心の元へ向かいたかったが任務とあらば断る訳にもいかない。
結局2週間の滞在任務を済ませたゆうりは漸く瀞霊廷へと戻ってきた。
「ただいま。これ、向こうで進めた書類よ。何か変わった事ってあった?」
六番隊隊舎の隊首室。手に持っていた現地調査に関する書類を白哉に手渡す。彼はゆうりの問い掛けに数秒口を閉ざした。訝しげに見詰めると、懐から1枚の紙を取り出し手渡される。綺麗に丸められた書面を広げ内容に目を通す。
「…六番隊四席、染谷ゆうりを現任務を終え次第十番隊三席への移籍を命ずる……総隊長山本元柳斎重國………え、なんで?三席は冬獅郎でしょ?」
「……日番谷冬獅郎は十番隊の隊長へと昇格した。卍解を会得したといえどまだ若輩者故、ゆうりが推薦されたまでだ。六番隊の四席には、阿散井恋次が着くことになっている。」
「そんな、一心隊長は!?話すことが沢山あったのに…!」
「書き置きを残し現世へ向かったきり行方を眩ませた。霊圧を感知する事も出来ないそうだ。」
「行方不明…?」
嫌な汗が頬を伝った。何故だ。落ち着き次第話そうと約束をしていたというのに。書き置きを残したということは自らの意志で現世へ向かったという事だとは思う。しかしなんの為に…?
「…現世に行って来ます。」
「許さぬ。隊長が行方不明になり総隊長殿は気が立っている。叱られる程度では済まなくなるぞ。」
「行先に心当たりがあるの!」
「姿を眩ませた時点で裏切りと同義だ。どの道隊長には戻れぬ。探すだけ無駄だと言っている。」
「……。」
「何処へ行く。」
「…十番隊よ。移動しないといけないんでしょう。今までありがとう白哉。また遊びに来るね。」
硬い笑顔で早口にそれだけ言い残したゆうりは隊舎を出る。向かった先は十番隊では無く、五番隊だった。自ら藍染に近付くのは気が引ける。しかしそんな事を言っている場合でもない。緊張しがちに隊舎の扉を押した。藍染の霊圧は感じ取れる。隊舎の中を歩いていると、見知った顔が反対側から小走りに駆けてきた。