第7章 死神編【後編】
霊力を巧みに操り瞬時に這縄を相殺させると喉に当てられる刃を手の甲で弾き市丸の腕から抜け出したゆうりは一心に助力しようとして止まった。制服姿の女の子が、虚に向けて矢を放っている。斬魄刀とは非なる武器だった。初めて見るあれは……
「「滅却師…!」」
藍染と声が重なる。授業ではとうに滅びた一族だと聞いていたが、まだ生き残りが居たとは。突然現れたイレギュラーな存在に反応したのは2人だけでは無い。東仙はすぐ様彼女を排除しようと身を乗り出したが藍染により止められる。
そして、誰よりも、何よりも滅却師へ興味を示したのは虚だった。一心との戦闘で片腕を失った虚は彼女へ標的を変える。猛スピードで迫る虚にまだ幼い筈の彼女は怯える様子も無く、霊子で構成された矢を何度も飛ばした。しかしそれは全く命中はせず、刻々と虚は迫る。
「おいで。」
「バカ野郎、何して……!!」
「つーかーまーえーたっ。」
高校生の女の子は虚に向けて手を差し出す。迷わず飛び掛った虚の歯牙が彼女の肩へ深く食い込んだ。噛み付かれた本人は悲鳴1つ上げるどころか、左手に霊子を集め虚の頭へ向けて真横から矢で貫く。呆気に取られて見ていたゆうりは、なんて無茶な戦い方をする少女だと思った。
それを見ている誰しもが絶句する。次の瞬間、虚の穴を塞いでいた肉塊の様なものが身体の何倍もの大きさに膨らむ。それはまるで爆弾であったかの様に凄まじい音と共に爆破した。
「自爆…馬鹿なッ…!!」
風が爆風を吹消し、灰色の煙の中から姿を現したのは、倒れている彼女の姿ではなく、一心の姿だった。咄嗟に飛び出した彼は、滅却師の女の子を庇い爆発によって傷付いたらしい。
「大丈夫ですか!?」
「ああ…い、いて…すまねえ、助かったよ…。情けねえな…隊長ともあろうもんが女の子に助けられるなんてよ…。」
「そんな…助けられたのは私です…。私を庇わなかったらこんな大怪我…」
「ははっ!じゃあ貸し借りナシってことで!なっ!」
顔まで血に濡れた一心は彼女に向けて笑った。ゆうりはハッとすると直ぐに一心の真横へと降り立つ。そして外套のフードを外し、鬼道の流れを止める。ぼんやりと背景の中から姿を現すゆうりに2人は驚いた。
「ゆうりちゃんじゃねぇか!今、どっから…。」