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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第2章 過去編



「それじゃおやすみなさ〜い。」

あれよあれよという間に浦原の部屋まで連れて行かれる。外では相変わらず雷がゴロゴロと音を立て、時折眩い光を放ちながら地面に落ちた。彼は自分の布団の上に彼女を降ろすと、隣へ寝転び肩に掛けられていた毛布を互いの身体へ引き上げる

「これ、持って来てくれたのゆうりサンでしょ。ありがとうございます。」

「浦原さんが風邪引いたらいけないので。」

「優しいですねぇ。ゆうりサンは本当に、誰にでも優しい。」

「違いますよ。皆が優しいからです。」

浦原の片手が彼女の身体を抱き寄せた。彼の匂いと体温でなんとなく安心感を覚え、少しだけ恐怖が薄れた気がする。

「浦原さんの匂い、安心する…ちょっと薬臭いけど…。」

「一言余計っス!」

「ふふっ…冗談です。」

ゆうりは浦原の背中に腕を回し己から抱き着いた。普段甘えてくる事の無い彼女の取った行動に思わず目を見張る。まだ出会って間もない少女に心を乱されるなんて。浦原は自嘲滲みた笑みを零す。

「今、ゆうりサンが流魂街で暮らす事になったとしても困らない為の道具を作ってるんスよ。涅サンもね。」

「あの涅さんが?」

「あの人の場合ゆうりサンの為というより研究の一環ですけどねぇ。」

「流魂街で過ごす事になったら皆さんと会えなくなるんですね…。」

「大丈夫ですよん、ゆうりサンにはボクの家に住んでもらうつもりですし、なるべく帰りますから。」

「それなら寂しくない、かな?」

浦原の掌がゆうりの頭のてっぺんから何度も髪を梳く。その動きが気持ち良くて、迫る睡魔にゆうりは弛緩な瞬きを繰り返した。

「…浦原さん、急にいなくなったりしないで下さいね。捨てないで下さい。」

「…えぇ、約束しますよ。ボクがあなたの親代わりですから。」

己へ向けられる柔らかな笑顔にゆうりも頬を緩めた。そうして間も無く意識が途切れる。寝遅れた浦原は眉をひそめて吐息を漏らす。

「…自分で自分の首絞めてどうするんスか。夜一サンに聞かれたら笑われちゃいますよ…。」

親になんてなる気は無いくせに。そう言われたら返す言葉もない。
彼女の良き親で有りたい。けれど、本当は。
そんなジレンマに悩まされて居るなどつゆ知らず、彼女はまるで人形の様に静かに眠り続ける。

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