第7章 死神編【後編】
事件から数ヶ月の時が過ぎた。季節は移ろい、いつの間にか秋から冬を通り過ぎ春に変わる。ルキアも徐々にでは有るが元に戻って来た。それでもまだ、顔に陰を落とす事がある。ゆうりは仕事を終えた所で斬魄刀を腰に差し、帰宅しようとしていた。
「お疲れ様です、染谷さん!」
「お疲れ様。」
「お疲れ様です!」
「お疲れ様ー。」
六番隊は挨拶を重んじる。すれ違う隊士達へ頭を下げながら門へ向かっている時、妙な噂が耳に入った。
「聞いてるか?最近、現世に駐在任務に向かった死神が死んだらしい。」
「俺も聞いた。原因不明なんだろ…?怖ぇ〜!」
ゆうりは立ち止まり振り返った。原因不明の死?その手の話は藍染が絡んでいるとしか思えない。彼女は直ぐに話をしていた隊士達を追い掛け声を掛ける。
「…ねぇ、その話詳しく聞かせてもらっていい?」
「えっ…染谷さん?」
「死神が死んだって話ですか…?」
声を掛けられると思っては居なかった死神の2人組はおどおどしながらも彼女の問い掛けに答えてくれた。話を聞く限り、それは十番隊の管轄している地区らしい。
「確か…鳴木市、とかいう場所だったと思います。」
「!…そう、ありがとう!助かったわ。」
「いえ!!」
鳴木市。空座町の場所を調べていた時に見た気がする。確か隣町だった。目的は平子や浦原を炙り出す為だろうか。それとも実験の一環か…とにかく藍染が噛んでいるという考えに間違いは無いだろう。ゆうりは門へ向かっていた踵を返し直ぐに白哉の執務室へ向かうと、彼も帰宅しようと準備をしている途中だった。帰ったと思われるゆうりが戻って来たところで、眉ひとつ動かさず白哉は席を立つ。
「白哉!」
「何だ。騒ぞうしい。」
「あっ、ごめん…ちょっと現世行って来ます。申請出しておいて。」
「この様な夜更けに何用だ。」
「じゃあよろしく!」
彼の問いかけに答えるより先にゆうりは消えた。瞬歩を使って穿界門へと向かったのである。突如現れそして台風の様に去っていく彼女に白哉は部屋に深い溜息を残し執務室を後にした。