第7章 死神編【後編】
「俺の隊は副隊長は居ない。代わりに三席を2人就いてもらう。まだ元柳斎殿の許可を得ていないけれど、副官候補だった君に断られ、他に推薦できる人物も居ない事を伝えれば納得して貰えるだろう。…情けない話、俺もまだ未練が有るんだ。生き返ることは無いと分かっていてるが、それでも…海燕が生きていた証をもう少し残しておきたい。」
浮竹は先日の出来事を思い出しているのか神妙な顔付きで指を組み視線を床へ落としたまま語る。彼の言葉にゆうりは同意の意志を示す様に首を縦に振った。
「それで、私が断ると分かっててわざわざ提案したんですね。浮竹隊長も人が悪いですよ!相談してくれれば、口裏位合わせるのに。」
「はは、まぁゆうりが断らず副隊長になってくれるならそれはそれで良しと思う気持ちもあったのは本当なんだ。海燕も、君であれば安心して任せるだろうしな。」
「そんな事無いと思いますよ、海燕さんは私が上に立つには向かないタイプの人間だって知っていますし。」
「そうかな?慈悲深く、仲間想いのゆうりなら問題ないと思うけれど。」
「…それだけじゃ足りないんです。護れるくらい強くないと、気持ちだけ持っていてもなんの意味も無い。それが、最近よく分かりました。」
護ろうという意思がどれだけ有ろうとも、実力が伴わねば意味を為さない。実際、母も海燕も護ることが出来なかったのだから。市丸の忠告があったにも関わらず、全く生かす事は出来なかった。思い返すととてもやるせない気持ちになる。
「…ゆうり、何か悩んでいる事は無いか?」
「いえ、有りません。」
「そうか、それなら良いのだけど。君は偶に思い詰めた表情をするからな。」
「そんな顔してましたかね…?大丈夫ですよ。お心遣いありがとうございます。そろそろ仕事に戻らないとならないので失礼します。」
「あぁ、三席に関して決まったらまた連絡する。それと…空いている時間で構わないから、また朽木に会いに来てやってくれ。」
「はい、もちろん!」
話を終えたゆうりはソファを立ち上がり六番隊へと戻った。そろそろ秋も終わり、冬が近づいていることもあってか外はかなり肌寒く感じる。両腕で腕を摩り歩く。吐き出した吐息は外気の寒さを現すように白む。
「さむ…。」