第7章 死神編【後編】
「…そんな事言わないでルキア。殺したくてそうしたわけじゃないでしょう。」
今この場で、何故こんな事が起こってしまったのか全て話してしまいたかった。まるで死神を殺すために造られたかのような虚がどうして存在するのか、伝えてしまいたかった。
それを深い悲しみと共に押し殺し、飲み込むように下唇が切れるほど強く噛み締めルキアの身体を抱き締める。こんなに細く小さな身体で、慕っていた男を殺すなど心が壊れてしまいそうになるほど辛かっただろう。苦しかっただろう。
「うぅっ……ぁああ…!!!」
「何も出来なくて、ごめんね…。」
ゆうりの背中に腕を回しルキアは声を上げて大粒の涙を零す。彼女の背を優しく撫でながら、市丸との会話を頭の中で反芻させた。彼の言葉の意味が今はよく分かる。現世へ逃げてしまえと言った理由がこれだ。確かに、母の死を目の前にした時よりも正直堪える。これから幾度とこの苦しみを味わう事になる可能性が有るかと思うと恐ろしくて発狂してしまいそうだ。けれどまだ、まだ全ての可能性を失った訳では無い。海燕と融合した虚を見つければいい。一縷の望みを失う訳にはいかない。
それから長い時間、涙を流し続けるルキアの元で様々な思考が交叉する中、傍に寄り添う内に泣き疲れた彼女と共に眠りにつくのだった。
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