第7章 死神編【後編】
淡々と述べられる言葉に耳を塞ぎたくなった。唇が震えた。海燕さんが死んだ…?しかも、とどめを刺したのはルキア…?なんだ、その地獄の様な図は。心臓がドクドクと血液を流す音がやけに大きく聞こえる。嫌な汗が全身から吹き出た。
…護ると豪語したのに、こんなにも早く大切な人を1人失った…?頭が割れそうな程痛い。
「そうだ、卍解……卍解を、使えば…。」
『無駄だよ。』
「うわっ…!」
ゆうりが斬魄刀を構えた途端ポンッ、と軽い音と煙を立てて先程話したばかりの彼が現れた。白哉は具現化した男に僅かばかり目を見開く。四番隊で見た男だ。
「無駄って何…!?なんで…!?」
『何処にも志波海燕の霊子を感じ取ることが出来ない。彼と融合した虚は、志波海燕の身体ごと虚圏に逃げたか…強制的に向こうへ持ち帰られたのだろう。』
「でも…ッ!一度触れた事が有る人は蘇らせることが出来るって言ったじゃない…!!」
『確かに、志波海燕に触れたことはある。けれど彼と融合してしまった虚にゆうりは触れていない。だから、残念だけど虚から引き剥がす事が出来ないんだよ。』
「なにそれ…意味わからない……。」
『卍解は強い。強いからこそ相応のリスクや欠点は有る。彼の場合特殊だけれど…兎に角、身体を乗っ取った虚へ触れない限り彼はどうにもならない。』
「虚だって死んだんでしょ…!?それじゃあ、もう…。」
『…どうだろうね。少なからず志波海燕の霊子を引き戻す事が出来ないのは確かだ。どちらも本当に死んだのならば虚と志波海燕にバラけて霊子となるから、強制的に卍解で志波海燕のみ再構築させる事が出来るけれど、何かが阻害している。阻害されているということは、殺したと思った虚は生きていたと考えるのが自然だろう。』
「そんな…。」
強い絶望感にゆうりは言葉を失った。兎に角今は何が起こったのかを知りたい。その一心で斬魄刀を鞘に収め、白哉に頭を下げる。
「…話を伺いに、十三番隊へ行ってきます。」
「構わぬ。が…卍解を会得したのか?」
「そうみたい。…でも、誰にも言わないで。本当に必要な時以外使わないし、戦闘向けでも無いから。」
ゆうりは踵を返し瞬歩でその場から消えた。何故か胡蝶蘭は彼女を追うことも無く背中を見送る。白哉は彼へ視線を向けた。
『…何か言いたそうな顔だね。』