第7章 死神編【後編】
悪びれ無くニコニコ笑い告げる彼にゆうりの頬は引き攣る。てっきり斬術で勝たないと得られない力だと思っていたのに、実は既に使える状態になっていたなんて考えもしてなかった。
「なんだ、そうだったんだ…。」
『ふふ、でもちゃんと力はついただろう。さぁ、精神世界から戻るんだ。白哉君が心配そうに見ている。何かあったのかもしれない。』
「物騒なこと言わないでよ。ねぇ、もう1つだけ聞いてもいい?」
『どうした?』
「白哉に、胡蝶蘭と私は似てるって言われたの。斬魄刀って持ち主と姿が似たりするのかなと思って。」
『……必ずしも似るわけではないよ。僕とゆうりが似ているのはきっとたまたまだ。』
「そっか。ありがとう胡蝶蘭。」
『どういたしまして。行ってらっしゃい。』
元気にブンブンと振られた手に胡蝶蘭は返し、彼女が精神世界から消えると彼は表情を消す。振り子の様に緩慢な動きで振り返す手を止めキュッと拳を作り瞼を下ろした。
『…今度は選択を間違えてくれるなよ。全て元に戻すなんて土台無理な話だ。何を護り、何を諦めるのかしっかり自分で見極められるようになって。そうでないと…僕はまた、君に卍解教えてしまった事を後悔してしまう。』
彼の呟きはゆうりの耳に届くこと無く消えていった。
一方、対話を終えて精神世界から戻ったゆうりは隊舎の縁側で刃禅から目を覚ます。空は既に日が落ち暗くなっていて、ふと隣を見ると白哉が立っていた。
「…あれ、私そんな長時間入り込んでた?」
「ゆうり。」
「白哉…?なに、どうしたの…?」
まだ勤務時間は終わっていない。本来なら執務室で書類を進めて居るであろう彼がわざわざ目が覚めるのを待っていた事に違和感を感じる。頭の中を胡蝶蘭が残した言葉が過ぎった。胸の中がざわめく。
「………十三番隊三席及び、志波海燕が殉職した。」
「……え?」
「斬魄刀の機能を完全に奪い、死神の身体と融合出来る虚が現れたらしい。志波海燕は虚に身体を乗っ取られ……ルキアが虚ごと殺したと聞く。殺された志波海燕の身体は霊子となり消えたそうだ。」