第7章 死神編【後編】
『…母を蘇らせるのは辞めた方がいい。君と彼女の和解は望めないし、なにより……彼女はこの尸魂界で過ごすより転生する事を望むだろう。』
「そ……っか、そうだよね…。」
急に気持ちが萎んだ。胡蝶蘭の言う通り、会いたい、和解したいというのは全て己のエゴだ。再会した時、流魂街で暮らす事を嘆いていた彼女を蘇らせた所でまた怒り狂うのは容易に想像出来る。
それから彼に他に出来ることや、発動する上での条件をこと細かく聞いた。ゆうりは真剣に彼の言葉を聞き頷く。同時に、自分の卍解ならば、何が起こっても救済できる可能性がある事を確信する。
『ゆうりはこの力がとても便利なものだと思っているかもしれないけれど、卍解はキミの霊力をかなり喰らう。使い方を間違えればゆうり自身、消滅してしまうかもしれない。だから無理して使ってはならないよ。』
「………うん。」
『…僕がこうして意識を持って話せるのはゆうりが生きているからだ。キミが死ねば勿論僕も死ぬ。自分を犠牲にしてでも何かを護るという考えは、そろそろ捨ててくれ。ゆうりを大切に思っているのは僕だけじゃない。キミが死ねば悲しむ者も山ほど居るんだから。』
返事まで妙な間が空いたゆうりにすかさず言葉を続けると彼女は本当に小さく頷いた。今までずっと、誰よりも近くでゆうりのことを見て来たからこそ分かる。彼女は仮にもしも死神が全滅するような事が有れば、自分の身を呈してでも卍解の力を使うだろう。それがとても恐ろしく、卍解を教えるのを渋った理由だった。
「ありがとう胡蝶蘭。後は貴方を私たちの世界へ呼び出して、屈服させれば良いんだね。」
『ゆうりはもう卍解を使えるよ?』
「え!?」
『キミの卍解の根源は回帰能力だと言っただろう。眠り続けていたその力を引きずり出した時点で僕は屈服している。…そもそも、回帰能力に気付くのも遥か先になるかと思っていたのだけれど、有昭田鉢玄との出会いのお陰で随分使える時期が早まってしまった。』
「それじゃあ、今までの戦いは…。」
『ゆうりは斬術が下手だからね。まともに扱えるように稽古付けてあげようと思って嘘を着いた。それに、卍解を会得する為僕に会いに来てくれるだろ?』