第7章 死神編【後編】
『卍解について知りたい?』
「うん。せめて私の卍解がどういうものなのか知りたいの。普通の卍解は強くなるんだよね?」
ここは精神世界。空は曇り少し肌寒く感じる。もっとも、精神世界故に気の所為かもしれないが。市丸との会話を終えてから数日後、相変わらず卍解の会得の為仕事の合間、こうして斬魄刀と話し夜は誰も居ない流魂街まで赴いては胡蝶蘭を具現化させ勝負する機会を増やした。
『前に少し話したと思うけど、ゆうりの…というか僕の卍解は特殊だよ。刀があれ以上大きくなる事は無い。ましてや強くなる事もない。』
「じゃあ私の卍解にはどんな力があるの?」
『…知りたいのかい?どうしても?』
「…うん。本当は、使うのが怖くて聞けもしなかったけど…これからの戦いはもう卍解無しでは無理だと思う。」
切羽詰まった顔で俯き加減に答えるゆうりに胡蝶蘭は瞳を細め彼女の頭に手を乗せ優しく撫ぜる。顔を上げると彼は少しだけ複雑そうな顔で笑っていた。
『ゆうりに何故自分に回帰能力が備わっていると思う?』
「え…?なんでだろう…条件とかあるの?」
『有る。斬魄刀とは君自身の魂の写しだ。ゆうりは生前から普通の家庭だった幼い頃に戻りたいという想いがとても強かった。これが回帰能力がキミの力として備わっていた理由だよ。そして、死後は何かを護りたいという願いが強くなった。』
「…成程。」
『ゆうりの卍解は簡単に言うと回帰能力が飛躍的に向上したものになると思っていい。例えば…そうだな、虚を整だった頃に戻す事も出来れば生きていた頃に戻す事も容易い。』
「生前に戻す…!?」
『そうだよ。"回帰"だからね。ただ、それはバランサーとしての仕事全てを否定する事になるからやるべきでは無いと思うけど。そもそも死者が生き返ったところで生者は受け入れられないし。』
「確かに、死んだと思ってたのに現れたら怖いよね…。」
『後は…一度触れた事が有るものならば霊子として散ってしまった後でも魂魄として蘇らせる事も出来る。』
「本当!?」
彼の言葉を聞きゆうりは直ぐに肩に掴みかかった。それが本当だというのならば、母を蘇らせる事が出来る。
その気持ちを察してか、胡蝶蘭は首を横に振り彼女の手を降ろさせた。