第7章 死神編【後編】
市丸の答えを聞いても矢張り納得が出来ない。彼らの目的を探っている中でどうしても分からなかった事がある。ゆうりは目を塞ぐ彼の手を退かした。
「…ずっと分からなかったの。貴方だけ、離反をしようとしてる理由が。」
「わこうたん?」
「藍染隊長が何をしようとしてるのかは、図書館にある本が教えてくれた。どうしてあんな大それたことを考えているのかは知らないけれどね。正義に重きを置いて、誰よりも真面目で純粋な東仙さんが藍染隊長を選んだ理由は、狛村隊長が教えてくれた彼の過去で分かった。…けれどギンが藍染隊長を選んだ理由は、乱菊さんの話を聞いても全然分からなかった。貴方本当昔から大事な事は誰にも言わないし頼らなかったのね。」
「それ、ゆうりにだけは言われたないわ…。」
「ふふ、でしょうね。…ねぇ、ギン。藍染隊長殺す気でしょ。」
「…何言うてん。仲間やで?それに、ボクも藍染隊長の始解見とるしそもそも勝算があらへん。」
「仲間を裏切るのは十八番のくせに何言ってるの?それと、その言い方は勝算さえあれば殺したいって言ってる様に聞こえるわ。」
「…ほんま敏いなぁ。」
「ギンは何を企んでるの?少なくとも藍染隊長がしようとしてる事に同意してるとは思えない。彼が作ろうとしてる世界に焦がれてるとは思えない。」
「…その通りや。否定はせんで。ボクは藍染隊長に最後まで着いてく気はあらへん。あの人のやろうとしてる事も興味ない。言うたやろ、ボクが大事なものは決まっとる。ゆうりはこれ以上なんもせんでええ。現世に姿眩ませて、全部終わったらボクん所戻って来てや。」
「…何言ってんの馬鹿。」
彼は藍染隊長の作る世界に興味が無いと言った。それなのに全部終わったら、なんて事を口にする。この言葉が意味するのは1つしかない。この男は藍染隊長を殺すつもりで傍に居るのだ。何故、と言われたら分からない。けど多分乱菊さんに関する何かが有るのだろう。全てを欺き、独りで戦おうとするギンに胸が痛くなった。誰も信じない。信じられるものは己が見聞きしたもののみ。それがどれだけ孤独な事かを知っているからこそ、彼を見るのが辛い。
ゆうりは両腕を彼へ伸ばし抱き着いた。彼女から抱き着いて来る事など今まで思い当たるのは一度だけだ。市丸は細く瞳を覗かせ片手を彼女の背に回し優しく抱き締め返す。