第7章 死神編【後編】
「…ほう、"ゆるさない"かな。なかなかどうして、彼女の心を折るには足りない様だ。」
「あらら、何でここに居るのバレたんやろ。見えへん筈やのに。」
「……彼女特有の鬼道かもしれない。」
「そうだね。或いは憎悪だけで我々を捉えたか…まぁいずれにせよあの成長速度は目を見張るものがある。彼女と本気で刃を交えてみたくなった。」
「…あきまへんよ藍染隊長。」
「分かっている、今とは言わないさ。」
らしくない言葉に市丸は顔を顰めた。楽しそうに瞳を細めた藍染の真意は全く読めない。彼は鼻を鳴らし笑い踵を返す。
「さぁ、戻ろう。次の実験の準備に移る。」
「一度撃退されたホワイトの完成も近いです。程なく実験を執り行うことが出来るでしょう。」
「それは楽しみだ。」
3人は静かにその場を去った。ゆうりは、気配が消えたのを察知して下唇を強く噛み締める。これ程までに苛立ち、悔しい思いをした事は無い。黙祷を辞めたルキアが彼女の表情の変化に気付き訝しげに覗き込む。
「ゆうり?何をそんなに怒っているのだ…?」
「…ううん、なんでもない。海燕さん、ルキア、手伝ってくれてありがとう。」
「……おう。あー…アレだ。落ち込むなって言われて、はいそうします、なんて言えねーのは分かってる。けど、お前には俺らが着いてるからな。溜め込むなよ。」
「…えぇ、大丈夫。もう充分泣いたから。報告も有りますし、帰りましょう。瀞霊廷に。」
最後に墓へ一瞥くれたゆうりはキュッと瞼を降ろし背を向けた。助けることの出来なかった後悔は、次に活かせ。経験を無駄にするな。二度と目の前で誰も死なせるな。まだ回帰能力を使いこなせる訳ではないのだから。
頬を叩かれた時とは違った意味でズキズキと痛む心臓を抑え、ゆうりは瀞霊廷へと足を向けるのだった。
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