第2章 過去編
以前、図書館で伊勢七緒という子供に出会った。彼女はまだ幼いながらもしっかりと死覇装に身を包んでおり彼女自身、自分を死神だと言っていたのを覚えている。あんな小さい子供が、虚退治に向かってるなんて事があったら驚くだけでは済まない。
「それにしても、ゆうりはどこの隊でも人気らしいじゃないか。」
「え?」
「お前毎日誰かしら隊長に捕まってるだろ。滅多に無いぜそんな事。」
「えぇ!?」
確かに、よく考えて見れば普通の隊士が隊長、副隊長と話している姿はあまり見た事が無い。ましてや別隊に関しては尚更だ。…もしかして、自分は他の隊から妬ましく思われていたりしないだろうか。そんな不安が過ぎり、近くに居た志波の手を掴んだ。
「わ、私全然考えてませんでした…他の隊士の方から狡いって思われて虐められたらどうしよう…。」
「ぶはっ、いやそれは大丈夫だろ。心配ねぇよ。」
「なんで…?」
「虐めた事が隊長にバレたらこっぴどく叱られるなんてモンじゃ済まねぇだろうし。それにお前は死神じゃないからな。何も出来ない女相手に手を出すような根性曲がった奴は居ねぇ。」
「確かに…そんな事考える方が失礼でしたね。すみません。」
現世ではちょっとしたことがきっかけでイジメに発展する事はまま有る。しかしここは死神達の住む世界。見た目はまだ若くとも生きてきた年数が違う。随分子供じみた心配をしてしまったらしい。
「さて、そろそろ十二番隊戻るか。あんま長く借りてるとお前の所の隊長怒りそうだし。」
「ふふ、浦原さんは怒ったりしませんよ。」
そんなやり取りを経た後、ゆうりは浮竹に頭を下げ志波に連れられて十二番隊隊舎へと戻った。
隊舎では相変わらず涅と阿近が研究に没頭していたがそこに浦原の影は無い。隊首室まで進むと、机に突っ伏して眠る彼が居た。
「こんな所で寝たら身体痛めますよ、浦原さん。」
浦原の身体を軽く揺すってみる。しかし起きる様子は無い。どうやら疲労が溜まっているらしく深い眠りについている様だ。
「仕方ないなぁ。」
ゆうりは浦原の自室へ入ると押入れから毛布を引っ張り出した。床に引き摺らない様に持ち彼の元へ戻ると、ソレをそっと身体へ掛ける。
「せめて風邪は引かないで下さい。いつもお疲れ様です。」