第2章 過去編
ザアザアと雨が降りしきる。雲はどんよりと重く暗い色をしており暫く止みそうには無かった。ゆうりは空を見上げながらそばに居た男に声を掛ける。
「尸魂界にも雨って降るんですね、海燕さん。」
「あぁ、ちゃんと四季も有るくらいだからな。」
「今日は1日降り続けるだろうね。」
返事を返したのは志波と浮竹だ。今日ゆうりは、志波に呼ばれ十三番隊の隊舎へと来ていた。浮竹は京楽と同じようにまるで父のようであり、志波は兄のような優しさを持っている。ゆうりにとってとても話しやすい相手だった。
「もうこっちの世界には慣れたかい?ゆうり。」
「うーん、どうでしょう。死んだ時よりは色々な事を学びましたがまだ知らない事はいっぱい有るみたいで。」
「図書館で色々調べてるんだろ?面白い本あったか?」
「はい!鬼道の本を読んでます。……あの、海燕さん達は何故死神になろうと思ったんですか?」
彼女の問い掛けに2人は目を丸めた。そして顔を合わせると浮竹は困ったように笑い、代わりに志波が口を開く。
「あのな、流魂街に住むヤツらと俺達死神の違いって分かるか?」
「いえ、わかりません。」
「ゆうりってちゃんと腹減るだろ?」
「そうですね、お腹すきます。」
「流魂街で暮らす奴らは腹減る事は無いんだよ。水だけ最低限取ってりゃ消滅することは無い。」
「そうなんですか!?」
「お腹が空く、っていうのは霊力が高い者が感じる現象なんだよ。けど…流魂街に食べ物はあまり無い。それにお金を稼ぐ手段も少ない…ここまで言えば分かるかな?」
浮竹の言葉にゆうりは少しばかり考える素振りを見せてから頷いた。つまり、死神になるしか道が無かったんだ。それしか生きる術が無かった。なんて酷な話だろう。
「死神になったからつっても、直ぐに虚退治に行かせるわけじゃねーし、ちゃんと上のやつが下を見てくれっから大丈夫だぜ。無闇矢鱈に死神を死なすわけにはいかないからな。」
「でも、私より小さい子が死覇装着てたりもしますよね?」
「連れてかねーよ、ある程度戦えるようになるまではな。」
「よかった…。」