第7章 死神編【後編】
海燕はルキアの頭に手を乗せ力強く彼女の小さな頭を撫でた。ボサボサに乱された髪を整え文句を口にするが、その表情は怒っているようには見えず寧ろ嬉しそうにも見えた。まるで白哉よりも兄妹らしい光景にゆうりは思わず苦笑する。まぁ、白哉がこんな風にルキアと戯れる姿はそもそも想像出来ないのだが。
「すっかり海燕副隊長とは仲良くなったみたいだね。」
「コイツの技も俺との鍛錬で編み出したんだぜ。」
「何故海燕殿が誇らしげなのですか…。」
「そりゃオメー、1から育て上げてきた大事な部下だぞ。ここまで立派になって、誇らしいに決まってんじゃねーか。」
歯を見せて笑う海燕に対してルキアは頬を赤く染めた。上司と部下として確たる絆が出来始めているのを感じてゆうりは瞳を細める。
そんな時、不意に海燕が懐へ入れていた伝令神機がけたたましく鳴り響く。
「あァ?…虚か。流魂街に出るのは珍しいな。ここから近い。ちょっと行ってくるわ、お前らはここで大人しくしてろよ。」
「わ、私も行きます!!」
「私も行きます。この近くなら魂魄達の家がある場所付近ですよね?被害が出ないようにしないと。鬼道は使えるから大丈夫です。」
「…そうだな、じゃあ一緒に来い。朽木ィ、遅れんなよ!」
「分かってます!」
取り出した伝令神機を懐に戻し、3人は虚の出現場所へ急いだ。流魂街で虚が出る事は余り多くは無い。現世に比べ多くの死神達が尸魂界に居るが故に、虚も行き難い場所なのだ。それでも流魂街へ現れる虚は、力に自信が有るか唯頭が悪いかのほぼ2択だった。それが故に前者だった場合の事を考え3人は強く警戒しながら向かう。
「見えた、あそこの集落付近だな…。」
「虚は…見当たりませんね……。」
「逃げたか…?」
「この短時間で?でも、集落が全然襲われてないのは不自然ですね…。」
到着した場所では1つの集落があった。魂魄達は突然現れた死神達にやや困惑したが見渡す限り特に建物の破損や虚の出現による混乱は見られない。海燕は伝令神機を取り出し虚の出現位置を再確認したが、やはり場所はここで間違いない。
「気を付けろ、どっかに隠れてる可能性がある。」
「確かに、微かに虚の霊圧は感じますね……ゆうり?」