第7章 死神編【後編】
「そろそろ戻る?」
「あぁ、充分休んだ。」
「そっか。」
日番谷の手を取って立ち上がり、彼を見下ろす。身長差は30センチほどだろうか。頭はゆうりの肩より少し低い位置にあった。ふと現世で生活していた頃読んだ雑誌の内容を思い出す。確かカップルがイチャつく時に適切な身長差、だとか。ゆうりは悪戯っ子のように口元に弧を描かせて身を屈めるなり人差し指を彼の唇へトン、と乗せる。
「…ね、知ってる?キスしやすい身長差ってだいたい15センチ差なんだって。冬獅郎が後15センチ位伸びたら丁度いいね。」
「な……お、俺は越すって言っただろ。後45センチ伸びる。つーかなんでイキナリ脈絡もねェ事言い出してんだ。」
「ふふ、言うねぇ。何となーく、読み物の内容を思い出しただけだよ。…男の子の君に私はいつか抜かされるんだろうね。冬獅郎に見下ろされるのは、あんまり想像出来ないけど。」
「しなくていい。現実にするからな。それまで楽しみにしておけ。」
彼は口元を緩め笑った。ここに来てから漸く見せた笑顔に自然とゆうりの頬も緩む。日番谷が何故、死神になってから憂いの表情を浮かべていたのか今は分からない。いつか彼自身、話したいと思える日が来るまで静かに見守ろうと思った。
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