第7章 死神編【後編】
ゆうりに至っては、こんな事があったにも関わらず顔色1つ変わらねェ。子供である俺にはまるで興味が無いかのように思えて意味も分からないまま腹が立った。
悶々と頭の中を思考が巡る中、埃をおおかた払い終えた彼女と目が合う。また、ドクリと心臓が鳴った。
「ほら、やっぱりまだ子供でしょう?」
「死神は体の成長が遅いだけだ。年数で言えば本来成人してるだろ。だから、ガキじゃねェ。」
「…そんなこと言われたら私なんかもうおばあちゃんだよ…。死神は今見えてる姿が全てだもん…まだ私だって18歳位に見える筈だわ…。」
真顔で放たれる彼の言葉がグッサリと刺さったゆうりは肩を落とす。現世での年齢などもう、考えたくも無い。隣で聞こえてきた溜息に視線を遣れば日番谷は、地面に置かれたゆうりの手に自分の手を重ねる。まだ少し小さいけれど、筋張っていてちゃんと男の子らしい手に感じた。
「俺が直ぐに追い越してやる。身長もな。…だから、お前はそのままで居てくれ。」
「ふふ、心配しなくても大丈夫だよ、もうこの姿から全然変わらないもの。冬獅郎もあっという間にみんなと同じ位の年齢まで成長するよ!」
「当たり前だ。いつまでもガキ扱いされてたまるか。」
「…とことん冬獅郎は私と似てるね。」
「何処がだよ。」
「私も海燕さんに子供扱いするなって、よく言ってたなと思って。そう考えると私の中身はまだ子供なのかも。」
「…ゆうりはなんで子供扱いされるのが嫌だったんだ?」
「え…?」
彼の問いかけに目を丸めた。何故子供扱いされたく無いのか…問われると直ぐに答えが出て来ない。別段困る事がある訳でもないのだから。ゆうりは顎に手をあて身体ごと横に倒し回答に悩む。
「なんでだろうね…?同等と扱われたかったからかな。仲間だし。」
「……へぇ。」
「何よ、その返事!」
「別に。」
日番谷は、ふいっと顔を背けた。己が子供扱いされるのが嫌なのは子供だと思って躊躇い無く触れられる事、何の意識もされない事に今何となく腹が立ったからである。ところがゆうりは別の理由を語る。それが本心なのか、無意識の内に海燕に好意があるが故なのかが分からない。日番谷は立ち上がりゆうりへ片手を差し伸べた。