第7章 死神編【後編】
「お、俺……!」
「…うん?」
「霊術院に居た頃からお前のこと………!!」
「……うん。」
檜佐木は自分の心臓がバクバクと大きく脈打つのが己でも分かった。ゆうりの手の包む手に若干力が籠る。周りに聞こえるほど声が大きかったのか、飲みの席に集まった全員の視線が2人に集まった。雛森と吉良、伊勢は顔を赤らめはくはくと唇を開閉し、阿散井はキョトンと目を丸める。言い合いをしていた白哉と海燕は眉間に皺を寄せ、浮竹と一心は、おぉ…と声を上げ京楽は口笛を吹く。
「……ずっと、す…」
「だーめ。」
「!?」
最後まで言う事は叶わなかった。ゆうりはすかさず片手を檜佐木の手の中から引っ張り出し彼の唇を隠す。まさか封じられると思っていなかった彼は両目を見張り彼女を見詰めた。ゆうりは些か不機嫌そうな顔をすると、そのまま檜佐木の耳元へ顔を寄せる。
「大事な言葉は、誰も居ない…修兵が酔ってない時に聞かせて。」
「ッ〜〜!!」
彼女の言葉に檜佐木の頭は完全に思考を停止した。まるでボンッ、と音でも立ちそうな程顔から身体まで赤く染めそのままふらりと倒れる。ゆうりはまるで他人事のように口元に手を充て、あらら…、と小さく呟く。
「倒れちゃった…。」
「あっはっはっは!まだまだ子供だと思っていたけど、ゆうりちゃんの方が全然上手だねぇ!」
「アイツたまーに本気で男を殺しに来るんだよな…。」
「ほう、兄もゆうりに骨を抜かれた経験が有ると。」
「さァな、気になるのか?白哉坊っちゃん。」
「こら白哉、無言で斬魄刀を取りに行くんじゃない!」
「へぇー!檜佐木はゆうりちゃんがねぇ…。」
「こ、こんな面前で…!」
京楽は大爆笑し、海燕は倒れた彼を見て些か同情の念を抱き頬を引き攣らせる。すかさず噛みついてきた男を煽ると、黙って斬魄刀を取りに自室に向かおうとする白哉を浮竹が止めた。一心はあごひげを摩り、伊勢はカチャカチャと眼鏡の位置を直す。