第7章 死神編【後編】
ゆうりから離れた松本は蟹沢、青鹿、斑目、綾瀬川と話している檜佐木へ突撃すると酒の瓶をそのまま彼の口に突っ込み強引に流し込む。ゆうりは文字通り酒に溺れている檜佐木から目を逸らすと、雛森、阿散井、吉良の近くに落ち着いた。
「3人とも、死神就職おめでとう!今皆何処の隊なんだっけ?」
「僕と雛森くんが四番隊で、阿散井くんが十一番隊ですよ。」
「あたし、五番隊の藍染隊長に移籍しないか誘われちゃった…。少し悩んでるんだ。」
「雛森くんも誘われていたのか。僕も先日、市丸隊長に誘われたんだ…。」
「藍染隊長かぁ…優しくて強いって女の子から人気よね。」
「は、はい!そうなんです…!」
キラキラと目を輝かせ語る雛森にゆうりは密かに眉を寄せた。いつの間にか藍染は、密に雛森へ接触をしていたらしい。市丸といい、何故彼らに関わろうとしているのだろうか。明らかに魂葬の時助けに来たメンバーである。そう思ったところで話題に上がらない阿散井へチラリと視線を送った。彼もそれに気付いたらしく、ケッ、と悪態をつく。
「んだよ、その目!俺は元々五番隊だよ!」
「入隊初日に喧嘩して独房に入れられたんでしょ。」
「な、なんで知って…!いや、それ抜きにしても俺はもっと強くなりたくて十一番隊に移ったんだ。」
「恋次はなんで強くなりたいの?」
「…越えたい人が居る。それだけだ。」
「越えたい人…?」
彼はそれだけ言うと何か思い詰めた表情で顔を伏せる。思い当たる節が全く無く、ゆうりは数度瞬きを繰り返してから小首を傾げた。
「恋次も目標にしてる人が居るんだ、一緒だね。」
「アンタにも居るのか?」
「居るよ。お互い頑張ろう!」
「お、おう?」
にっこり笑うゆうりに阿散井が今度は首を傾げる。彼女は殆ど隊長格に近い力を持っているはずなのに一体何を目標にしているのか検討すらつかない。
「ゆうり!」
「何?うわっ、修兵顔真っ赤!」
後ろから大声で声を上げられ身体が跳ねる。振り返れば松本に相当酒を飲まされたのか、顔を真っ赤にして据わった目をしている檜佐木が居た。彼に両手を包まれ、目を見開く。その後ろでは充分に酔っ払った松本と蟹沢、青鹿、斑目は酒を片手に何やら応援してるように聞こえる。綾瀬川はその全てを楽しむように口角を上げて笑う。