第7章 死神編【後編】
「…へぇ、ゆうりが?」
「そう。」
「どないな手段使うてこの暴れん坊痺れさせたん?」
「教えてあげない。」
「なんや、いけずやなぁ。」
市丸は斬魄刀を収めると更木の真横にしゃがみ込み、動けないのをいい事に頬を指でつついた後彼を俵のようにひょいと担いだ。己より大きい男を軽々と持ち上げるあたり流石隊長格だと素直に尊敬する。更木は相変わらず眉1つ動かせなくなっては居るが内心穏やかではないだろうと推測出来た。
彼らはそのまま行ってしまった。去り際に耳元で、囁き落とされた言葉にゆうりは市丸を鋭く睨む。
「…いけずなのはどっちよ。」
自分から武器捨ててまうなんて、ボクらに勝つ気あるん?
彼の残した言葉を頭の中で反芻させる。ただ苛立ちが募るだけだったが。漸く六杖光牢が解除された所で足の力が抜けそのままがくりと座り込んだ。目の前に現れた足を見てゆっくりと顔を上げる。白哉は無表情でゆうりを見下ろした。無表情では有るが、怒っていると確信出来る。何せ、目が冷たい。
「…………。」
「……あの…。」
「……言いたい事は?」
「……………申し訳ございませんでした…。」
無言の圧力にただ謝罪の言葉だけが口から出た。白哉は瞼を降ろし彼女に聞こえる程大きな溜息を吐く。今まで何度か呆れさせてしまうことはしたとは思うが、ここまで露骨に呆れた顔をされたのは初めてだ。
「…立てるのか?」
「あ、うん…傷は浅いから。この程度なら自分ですぐ治せるし大丈夫。」
本来なら回帰能力で袴ごと直し、何事も無かったかのように戻るつもりだったが今となっては既に傷を見られてしまっている為それも出来ない。
回帰能力を試す良い機会だと思っていたが、その力を白哉だろうと見せるつもりはなかった。ゆうりは淡く黄色い光を太股に充てて浅く切り裂かれた傷を塞ぐ。
「何故貴様は病み上がりにも関わらずよりによってあの男と戦っているのだ。」
「だから、出会い頭に斬りかかってきたのは更木隊長なんだってば!どうしようもなかったのよ、何処までも追ってくるんだもん…。」
「縛道で早急に足を止めれば良かろう。」