第7章 死神編【後編】
6つの帯状の光がゆうりの身体を囲うように突き刺さった。更木の目の前には刀の切っ先が地面に突き立てられている。何事かと空を見上げ、ゆうりは引き攣った表情を見せた。そこに居たのは市丸と白哉、そして総隊長こと山本元柳斎重國だ。
「…貴様は一体何をしているのだ……。」
「瀞霊廷内、バッタバッタ隊士が倒れとんで。」
「違ッ…私は戦う気は無いって言ってるのに更木隊長が……!」
「否、言い訳は認めぬ。よもや一般隊士の規範となるべく隊長、席官がこの様な惨事を引き起こすとは…。」
「ぐ……た、大変申し訳ございませんでした……。」
何も無ければ普段比較的穏やかな元柳斎の瞼が持ち上げられゆうりをじろりと睨む。総隊長相手にこれ以上反論する気は起きず彼女は言葉を飲んだ。
「こら怖い怖い。で、処罰はどうしはるんですか?」
「本日より斬魄刀の常時携帯を禁ずる!!」
「「「「!!」」」」
彼の一声にその場に居た4人が目を見開いた。斬魄刀を手元に置けないということは、ここで何かあった時に対処が出来ないという事だ。
「…それは、ゆうりと更木隊長だけで無く我々も適応されるのですか。」
「無論じゃ。瀞霊廷内で無用な争いが起こる程嘆かわしい事は無い。そもそもこの地で斬魄刀を振るわねばならぬ事態になる事が赦し難し!」
「……総隊長さんの命令とあっちゃボクらは何も言えませんわ。ほな伝令送りますー。」
市丸はニンマリと口元を歪めゆうりを見遣り地獄蝶を早々に派遣させた。まるでこうなる事が分かっていたかの様で、下唇を噛む。常に彼らの手のひらの内で弄ばれているようで気分が悪い。例え己が斬魄刀を持てなくなったとしても、市丸達は鏡花水月を用いてどうとでもなるのだ。…この地で、徐々に首を締められていく感覚に拳を作る。
「尚、更木剣八と染谷ゆうりは儂が許可を下ろすまでの期間、各自隊舎から出る事も禁ずる。」
「え!?き、帰宅は…?」
「ならぬ。」
「そんなぁー…。」
「くれぐれも逃げ出さぬよう。破れば、これ程甘くは無いぞ。」
「分かりました……。」
「市丸隊長は更木隊長を隊舎まで運んでくれぃ。儂は一番隊に戻る。」
「ハイっと…なんでノされとるん、キミ。ちゅーか一言も喋らんやん。」
「もう暫くは動けないよ、麻痺させたから。」