第7章 死神編【後編】
時は流れ、退院した翌日。ゆうりは予定通り書庫へと訪れていた。ここに置いある書物の殆どは読んだつもりだが、実際しっかりと読み通したのは死神の歴史集や事件、恋愛小説のみである。今知りたいのは過去の事件の真相ではない。藍染達の目的だ。
「うーん…この辺りとか、どうだろう。」
目を付けたのは、虚に関する資料と尸魂界の深い歴史に関わる本だ。特に前者の本に関しては貸出履歴を見る限り、読んでいる死神は多い。…その中に、藍染の名前も有る。流石にここまで誤魔化すことは出来ないようだ。
「尸魂界の歴史……授業ではなんとなく大雑把に習ったけど、書庫にはこんなに本が有るのね…。」
立ち並ぶ本を片っ端から取り出しては裏表紙にある貸出履歴を見た。藍染や東仙が目を通しただろう資料を手に取る。色々な本を手に取る中で、とても古く埃を被った本があった。表紙は焼け、茶色く色褪せている明らかに古い文献だ。裏表紙をめくり、貸出履歴を確認する。
「藍染、惣右介……だけ…。」
本を捲り、図解等も載せられた本を軽く流し見た。内容は尸魂界の成り立ちと、霊王が誕生した時の事が事細かに書かれている。
「この本…借りない方が、良さそうね。」
持ち帰るとどうしても履歴が残ってしまう。読むのなら、ここで読んだ方が良いだろう。本を閉じ、元あった場所に戻そうとしたところで、よく知る霊圧が書庫へと向かって来るのを感じた。この感覚は……藍染隊長だ。鉢合わせる可能性を想定していたゆうりは直ぐに死神の歴史集を手に取り持っていた本へ重ね、貸出カウンターへと急ぐ。
「…おや、染谷くん?風邪はもう良いのかい?」
「藍染隊長!お久しぶりです、お陰様で熱は下がったんですけど…仕事は休みにされてしまって。藍染隊長、四番隊まで来て頂いてありがとうございました。」
「いや、構わないよ。雛森くんが向かうと言うから僕も便乗させてもらっただけだ。それより、気に入ってくれたかい?マリーゴールドの花は。」
「…えぇ、もちろん。部屋に飾っています。」
「そうか、それは良かった。」
「では失礼します。」