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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第7章 死神編【後編】



ケタケタと笑った市丸はふらつく彼女の体躯を軽々と抱き上げた。横抱きの形で抱えられるのは些か恥ずかしくも思ったが、運んで貰っている手前文句は言えない。四番隊へ向かっているのは分かったが、辿り着くまで感じる視線がいたたまれず彼の胸板へ頭を埋める事で誤魔化した。

「……ギンは本当に優しいね。」

「目の前でふらふら倒れられたら放っとけんやろ。ボク隊長やしなぁ。」

「それもそうか…。」

困ってる相手に対して手を差し伸べるイメージは無いけれども。
口に出したら流石に落とされそうなので黙って彼に身体を預けた。駐在任務中、過剰な鍛錬を続けていた代償だろうか、それとも回帰能力を無理に急いで向上させようとしたからだろうか、兎に角自分の知らぬ間に疲労が溜まってしまったのだろう。情けない。
程なくして四番隊へ着いたらしい。運ばれている間、徐々に身体が更に重くなっていくのを感じる。熱に浮かされ、意識が微睡み始めた所で卯ノ花と市丸の会話が聞こえて来た。軈て身体がベッドの上へと降ろされる。

「あらあら、顔が随分赤いですね。」

「ボクと話してる途中で倒れはったんですわ。風邪や思うけど、診たって下さい。」

「えぇ、勿論です市丸隊長。勇音、点滴の用意をお願いします。」

「はい!」

「山田十三席は念の為、彼女が倒れた事を朽木隊長に伝えて来て下さい。勤務中戻って来なくなったら心配されるでしょう。」

「はっ、はい!」

「ほなボクは用終わったんで仕事戻りますわ。」

ひらりと片手を振り部屋を出ていこうとしたが、くいっ、と袖元が引かれ足が止まった。視線を落とすとゆうりの手が死覇装を掴んでいる。
呼吸を浅く繰り返す彼女の頬は、先刻から更に赤みを増していた。

「…もうちょっと、ここに居て。」

「……甘え上手になったモンやなぁ。」

「重病という訳では有りませんから、残っても構いませんよ。勿論、ご自身の仕事に支障がないならばの話ですが。」

ゆうりの脇へ体温計を挟み熱を測りながらにっこりと笑った卯ノ花はそれだけ残して部屋から1度出ていった。
市丸は近くにあった丸椅子をベッド脇に移動させてから腰掛け、火照った彼女の額へ手を乗せる。

「ギンの手、冷たいね…。」

「ゆうりが熱いんやよ。さっきより熱上がっとるやん。」
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