第7章 死神編【後編】
がしりと頭を掴まれ額同士をぶつけたままメンチを切られゆうりは苦笑して彼の手を払う。海燕は彼女の言葉に何かを悟り、ふーん、と声を上げ隻手に持っていた木刀で己の肩をとんとんと叩く。
「調度いいや、一旦休憩!オメーらしっかり水飲めよ!!」
彼の一言で隊士達は散り散りに仲良い者同士で集まり竹筒に入った水を飲みながら談笑を始めた。3年ぶりの瀞霊廷であるゆうりは彼らにとって全く未知の人物で、そもそも十三番隊の隊士なのかすら分からずチラチラと視線を感じる。
視線を一身に浴びる中、ゆうりは部屋を見渡した。隅の方で、1人ぽつんと汗を拭き竹筒の水を流し込む黒い髪をした華奢な女の子。…多分、あの子だ。直感的にそう感じ取ったゆうりは彼女へと近づく。
「こんにちは、女の子だと海燕副隊長の稽古、結構きついでしょう?」
「は、はぁ……どうも。」
「私六番隊四席の染谷ゆうり。浮竹隊長や海燕副隊長とは昔から良くして貰ってて、結構遊びに来るの。貴方名前は?」
「六番隊……あ…く、朽木ルキアです…。」
「ルキアね、私の事はゆうりで良いよ。よろしく!あ、これお近づきの印。」
「へ?むぐっ!」
隊を聞くとピクリとルキアの肩が揺れた。この場所で六番隊の名を聞くことは無いと思っていたのに。
突然話しかけられて戸惑う彼女にゆうりは懐に仕舞った落雁の包を取り出すと一粒摘みルキアの口へ無理矢理押し込んだ。ふわりと広がる優しい甘さに彼女は少しだけ硬かった表情が和らぐ。2人の様子を眺めていた海燕は肩を竦め歩み寄った。
「どう?現世で買ってきたの。」
「お、美味しいです…。」
「お前なァ、仲良くなるにしてももうちょっとやり方が有るだろ。普通いきなり落雁口にぶち込んだりするか?」
「え…あ、本当は甘いもの苦手だった!?白哉は甘いもの苦手だもんね。」
「に…兄様を名前で…!?」
「白哉とは昔友達だったの。今は上司だけどね。ルキアは白哉の……妹で合ってる?」
「……はい、義妹です。」
「そうなんだ!敬語じゃなくて良いよ。折角会えたんだから、友達になろう?」
「と、友達…?しかし、ゆうり殿は上官ですし…。」
「他隊の上官なんだから関係ないわ。それに私敬語苦手なの。だから普通に話して欲しいな。」