第7章 死神編【後編】
「流魂街に置いて来てしまった妹を探して、緋真自身が姉である事は伏せた上で義妹に迎えて欲しいと。…妻は、ずっと妹を探していたのだ。」
「そうなんだ…。」
「緋真が亡くなってから、私が探し続け一昨年漸く見付け…妻に姿が似ているからという嘘を吐き、緋真の妹であるルキアを我が屋敷へ迎え入れた。今は十三番隊に配属されている。」
「浮竹隊長と海燕副隊長の所だね。…あれ、ルキアちゃんって死神なの?」
「あぁ。私がルキアを見つけたのは真央霊術院だ。」
「今年配属されたなら、恋次達と同じ代なのかな…後で会いに行ってみてもいい?」
「ならぬ。」
「え?」
…ピシャリと断られるとは思っていなかったゆうりは頓狂な声を上げて瞬きをゆっくりと繰り返す。白哉は口が滑ったとばかりに掌で唇を隠した。
「…いや、行くのは構わぬが私から話を聞いた事は伏せろ。」
「……なんで?」
「理由を話すつもりは無い。」
彼の顔を見詰め、その言葉の意味を考えた。多分、ルキアの話をわざわざした辺り興味を持って欲しかった…或いは存在をただ知って欲しかったのは間違いないだろう。しかし、彼女の事を話したのが自分だとは悟られたくは無いらしい。
口元から手を外した白哉の顔を見続ける。彼の性格を鑑みると何となく理由を察し、ゆうりはにんまりと笑って彼の頬をつついた。
「…白哉、ルキアちゃんにどう接して良いか分からなくてあんまり話してないでしょ。」
「……必要以上の会話は不要だ。」
「元々白哉一人っ子だもんね、私もそうだけど。本当はルキアちゃんの事心配なんじゃないの?」
「そのような事は無い。憶測でものを言うな。」
「じゃあなんでルキアちゃんの事私に伝えたの?」
「………。」
白哉は無言でゆうりを睨んだ。普通の隊士ならば怯むであろう眼光は彼女に効くはずも無く、寧ろ瞳を細めて優しく唇を緩める。
「白哉は優しいもの。不器用だし口下手で分かりにくいけど。」
「…私を愚弄する気か。」
「違うよ。素直にこっそり見てきて欲しいって言えばいいのになって思っただけ。」
「私はただ貴様が居なかった間の出来事を話しただけで他意など無い。」
「ふふ、そう?じゃあ私は新しく入隊したルキアちゃんに興味が有るから会って来るね。」