第6章 死神編【駐在任務編】
「いいよ。どんな手段を使ってでも、止めるから。」
「言いよるやんけ。オレも甘ァなったわ…。」
「……復讐は何も生まないんだよ。だから真子達に藍染隊長達は殺して欲しく無い。捕らえた所で四十六室が処刑と判断するなら…それは受け入れるよ。」
「…なるほど、わかった。」
ゆうりの言葉に平子は小さく頷いた。彼女はホッと息をつく。もしもこれで敵同士となってしまったら、仕方が無いとは分かっているが矢張り辛いものが有る。張り詰めた緊張も解けたところで彼の肩にそっと頭を預けた。
「わがままでごめんなさい。」
「…アホ、女はちょっと位わがままな方が可愛ええわ。」
「ふふっ、上手い事言うわね。ありがとう真子。」
「礼なら口以外で返して欲しいんやけど?」
繋いでいた手が解かれ代わりに腰へと回された。ゆうりは一瞬視線を逡巡させる。彼の言わんとしていることは分かる。が、ここは外だ。ひとけの無い場所とはいえど、周りに人も沢山居る。
「……人見てる。」
「平気やて、みーんなカップルやろ。同じことしとる。」
「でも…」
「ほら、はよ。」
辺りをちらりと見て見れば確かにどこもかしこもイチャイチャと触れ合いを楽しんでいる様子だった。平子に急かされるように顔を寄せられ、ゆうりはグッと身を引こうとするが腰に置かれた手が阻む。
逃げ場を失った事で漸く観念すると、彼の隻手が頬へ添えられた。先程自分が選んだばかりの香水が柔らかく香る。強く瞼を降ろし視界を閉じた所で静かに唇を寄せた。
「……これでい…ッ!」
「足らんわ。」
うっすら瞼を持ち上げると灰色の瞳と目が合った。刹那、角度を変えて再び唇が重なる。高いリップ音と共に吸い付くようにして離れたかと思えば呼吸まで奪う程繰り返される口付けにゆうりは頬に熱が集まる。そんなゆうりの姿を見詰めながら平子はピアスの付いた舌で彼女の唇を端から端へ、ベロリと舐めた。
「ん…ピアス硬い…。」
「せやろ、ゆうりがくれたヤツやで。」
悪戯っ子のようにべー、と晒された舌には確かに己がプレゼントしたリング状のピアスが彩っていた。それが妙に照れ臭くて視線を横へ流す。彼女を後目に平子は立ち上がり身体を伸ばし、ゆうりへ手を差し出した。