第6章 死神編【駐在任務編】
平子はゆうりと同じようにサンプルの瓶を開けては匂いを確かめるだけでなく、瓶の見た目にも拘って選んだ。
「んー…この匂いもえぇけど、あんま瓶の形良くあらへんな。」
「私も携帯があったら写真撮るのにな。伝令神機に機能が付けばいいのに。」
「いや撮ったらアカンやろ、向こうで見られたら終いやで!」
「あ…そうだったね。真子の携帯にばっかり思い出残ってるのずるい。」
「それはしゃーなしやろ、頭ン中しっかり刻みや。忘れられん位思い出作ればええやん。」
散々迷った結果、アイリスの花をメインとした優しい香りの香水を手に取った。透明な瓶はダイヤモンドカットを施されており見た目も華やかで美しい。
「じゃあ買おっか。今直ぐ着けて歩く?」
「おん。ラッピング無しでええか。」
会計の列に並びそれぞれ購入した香水を店の外で開ける。ゆうりは胸元、平子は手首へ吹き付けた。ふわりと広がる香りに彼女は頬を綻ばせる。
「いい匂い。大切に使うね。」
「向こう戻ってもちゃーんと使うんやで?オレも毎日使うわ。」
「うん、ありがとう。」
それから再び肩を並べてアパレル店での買い物やカフェでの談笑を楽しんだ2人は完全に日が落ちた頃ショッピングモールの広場へと出た。一定の感覚で生え揃えられた木々には電飾が施されており中央には大きなクリスマスツリーが立っている。ここには家族連れよりも恋人同士で来ている者が多く、設置されているベンチは殆どそればかりだった。
「私達も空いてる所座ろうか。…話したい事も有るの。」
「あんまええ話や無さそうやなァ。」
ツリーから離れたひとけの余りない場所にあったベンチに座る。空は晴れており星が瞬いていた。ゆうりはつないだ手を握り直し、彼を見詰める。平子は何も言わず彼女の言葉を待った。
「…私は藍染隊長も、東仙隊長も…もちろんギンも多分殺せない。大切な人達を殺そうとしたのは分かってるの…。でも、誰かが死ぬところは出来る限り見たくない。」
「甘ったれた事言いよるやんけ。オマエは殺す気無くても向こうは殺す気かもしれんのやぞ。ゆうりを味方つける気かもしらんけど…正直アイツらがどっちを狙っとるか今の時点ではオレらも分からん。」