第6章 死神編【駐在任務編】
眉を潜めて唇を尖らせる平子にゆうりは笑った。モール内を歩いている中で2人は香水を売っている店の中へと入った。硝子のショーウィンドウに飾られた小瓶の香水は色々な形や色をしており目で見るだけでも楽しめる。ウィンドウの下にはそれぞれのサンプルも置いてあった。
「沢山あるね。真子は香水は使う事有るの?」
「あんま使わんなァ。ゆうりは?」
「持ってないかな。でも瓶可愛いし、1つくらい買ってみても良いかも。」
「なら、オレがゆうりに似合いそうなん選んだるわ。ゆうりはオレに似合いそうなやつ選んでや!」
「それいいね。どんなのが似合うかなぁ…。」
まずメンズコーナーの場所へ足を向ける。シトラス系やオリエンタル系が多く並んでおり、瓶の形も四角く細いスタイリッシュなものが目立つ。
「シトラスより、オリエンタル系の方が良さそう。真子って結構ミステリアスな所っていうか、掴み所が無い感じがするし。」
「飄々としてるとはよう言われたなァ。その方が女のコも惹かれるやろ?」
「そうなのかな?」
顔を覗き込ませて来る彼の言葉をすんなり躱してサンプルの入った小瓶を開けて色々な匂いを試す。中々ピンとくる匂いが見付からず、開けて嗅いでは首を傾げる。真剣に選ぶ姿を見て平子は徐にポケットから携帯電話を取り出すと、カメラを開きカシャリと音を立てた。彼の挙動に気付いたゆうりは慌てて携帯に向けて手を伸ばすがヒョイッと高く持ち上げられ空かす。
「…ちょっと、勝手に撮らないで!」
「デートやしオレの為に一生懸命考える所とか、撮りたいやん。」
「折角選んでるのに…!」
「心配せんと、可愛く撮れてんで。」
「茶化さないでよ。…これに決めた!」
手に取ったのは透明な瓶に黒に近い紺色のラベルが貼られたシンプルなデザインの瓶だった。強過ぎないラベンダー系の香りは時間が経つと共にスパイシーな匂いに変わっていく。主張し過ぎない密やかな香りが彼に似合っている様な気がした。
「次はオレが選ぶか。何にするか迷うわ。」
「女の子の瓶はカラフルだね。どれも素敵。」
ピンクや淡い水色、瓶の形自体もハート型や丸型、中には林檎の形をした変り種まで色々あった。どれも匂いは甘いものが多い。