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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第2章 過去編



「んー……そらけったいな話やなぁ。ゆうりちゃん、今浅打持っとらんし。」

彼は両目を閉じ眉間に皺を寄せたまま首を捻る。彼女を呼んでいる声の正体は直ぐに分かった。しかし、浅打を持たぬ彼女に何故ソレが語り掛けて来ているのかが全く分からない。

「浅打…?」

「斬魄刀になる前の刀や。つまりこれの事。」

平子は己の腰に有る斬魄刀を指先でちょんと突いた。そう、彼女は普通じゃない。浅打を持たずして斬魄刀との対話なんて今まで聞いた事が無いのだ。

「浅打っちゅーのは、真央霊術院に入学した時貸与されるんや。ほんで、浅打に自分の魂を写し取る事でその刀の名を知り、斬魄刀になる。もし夢の中で語り掛けてるのが斬魄刀だとしたら、ゆうりちゃんは極めて異例。間違いなく死神の道を歩まされる事になる。」

「えぇ……。私、まだ霊圧の制御もろくに出来ないのに…。」

「まぁ直ぐになんて事にはならんやろ、そもそも基礎が無いしなぁ。けど真央霊術院に通わされるのは確実やで。」

「そうですか…。」

まだ死神になる決心がついてもいないのに、困ったものだ。このまま彼の名前を知ってしまえば、斬魄刀が出来てしまい、私の将来が決まってしまうのだろうか…。なんだか霊圧の事と言い、斬魄刀の事と言い、死神になる事を急かされているようでモヤモヤした。

「ま、今周りに影響ある訳や無いし大丈夫やろ。声なんて無視してまえ!」

「無視!?」

「呼ばな始解もクソもあらへんわ。始解しとらん斬魄刀が勝手に具現化する事も、今まで例はない。気楽に考えや。」

ポン、と背中を叩かれる。これだけチャラけた性格でも彼は隊長だ。信頼出来る。ゆうりは平子の言葉に首を縦に振った。

「…ありがとうございます、人に話したら少しだけ、気持ちが楽になりました。」

「あんま1人で考え過ぎたらアカンで。ゆうりちゃんは自覚無いかもしれへんけど、キミ不思議な事多過ぎるからなぁ。オレらが想定出来る範囲を越えてくる可能性が充分ある。何か困ったらオレや他の隊長を頼り。約束出来るか?」

「はい!」

「おー、いい返事やな。ほなもう1つ。」

平子は真剣な表情から一転して悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ゆうりの片手を取ると細い小指に自分の小指を絡めた。
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